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まつもとあつしの「メディア維新を行く」 第85回

【第1回】アニメ『PLUTO』丸山正雄プロデューサー(スタジオM2)インタビュー

自身が送り出す最後の作品に――レジェンド丸山正雄が『PLUTO』に込めた想いを語る

2023年04月29日 15時00分更新

文● まつもとあつし 編集●村山剛史/ASCII

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パイロットフィルムに込めた理想
応えてくれたのはNetflixだった

丸山 ……そうしたら、またしばらくして今度は(手塚)眞さんから電話が掛かってきました。そこから再スタートしたんです。最初の企画から5年くらい経っていました。

 ぼくのアニメ人生は手塚治虫から始まっています。かつ、浦沢作品も3本やりました。その浦沢さんが手塚作品を翻案して描いた作品です。アニメをやるんだったら、ぼくがやるしかない――そんな運命みたいなものを感じました。とてもできるものではないけれど、やらなくちゃ、と。

 浦沢さんには一度、「アニメ化は無理だ」と話したこともあります。繰り返しになりますがやはり原作が全8巻という尺。そして、いまの日本アニメ業界の現状、あるいはぼくの力では、この原作に耐えうる映像ができるとは思えませんでした。もちろん、ぼく以外のところで宮崎駿さんがやるとか、庵野秀明さんがやるなら全然オッケーですが。つまり、そういった水準じゃないとぼくは見たくないよって。

 でも、「ならば、なおのこと丸山さんがやるべきだ」と浦沢さんは言うんです。「漫画のほうが絶対面白いって言われるよ」とぼくは返したんだけれど、「声や音が入った映像として見たい」と譲らない。しかも以前作った『YAWARA!』などと同じじゃ意味がない、それらを超えるものを作って欲しい、と。

 そこまで言うなら、まずパイロットフィルムを作りましょう、ということになりました。そこで、そのフィルムには『全編こんな映像でやれるならぼくも作りたい。そして、このクオリティーで作れるおカネをいただけるのであれば』という思いを乗せました。

 年齢的にもこれが最後になると思うから、最後の仕事として頑張りたい、と。

 すると、(理想のクオリティーで制作した)パイロットフィルムの評判が良く、原作者も含め「これでやりたい」となりました。そこからは真木さん(スタジオM2の共同創業者でジェンコ社長真木太郎氏)がスポンサー探しに奔走することになります。

 そしてパイロットフィルムのクオリティーを気に入ってくれたのがNetflixだったのです。

 条件が揃ってしまったので、もう頑張るしかありません。現実問題として制作に掛けられる時間と予算には限りがあります。そこで2023年には完成させようということになりました。

 じつは、浦沢さんには企画当初――まだNetflixに提案する前――に「原作を半分に縮めたい」と提案したこともあります。原作が8巻ですからおおよそ4巻分です。すると浦沢さんは、「やれるものならやってください」と言う(笑) そこからおよそ2年間、脚本開発を頑張ったのですが、どうにもならず、最後はぼくが音を上げた、という経緯もありました。

―― やはり原作を縮めることは難しかったですか。

丸山 『ここを削るとあそこがつながらない。大事なものがなくなる……』といった具合でしたね。その段階で『やはり通常の30分シリーズでは作れないのでは』と覚悟しました。ただ、覚悟したと言っても、その段階では、企画が動くと確信できてはいません。

 ところがその後、Netflixのような動画配信サービスが登場したことで『実現可能性が高くなったな』と思いました。つまり、30分枠に拘る必要のない公開形態が生まれたからです。

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