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放流しても河川に魚は増えない、長期的には悪影響=北大など

2023年02月16日 05時57分更新

文● MIT Technology Review Japan

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北海道大学とノースカロライナ大学などの共同研究チームは、理論・実証分析の双方から、河川における魚の放流が魚類群集に与える影響を検証。魚のふ化放流は多くの場合で放流対象種を増やす効果はなく、むしろ、その種を含む生物群集を減らすことを明らかにした。

北海道大学とノースカロライナ大学などの共同研究チームは、理論・実証分析の双方から、河川における魚の放流が魚類群集に与える影響を検証。魚のふ化放流は多くの場合で放流対象種を増やす効果はなく、むしろ、その種を含む生物群集を減らすことを明らかにした。 研究チームは、シミュレーションによる理論分析と、サクラマスが様々な規模で放流されている河川をはじめとする全道の保護水面河川における過去21年の魚類群集データによる実証分析を実施。その結果、放流は種内・種間競争の激化を促し、放流対象種の自然繁殖を抑制すること、さらに、他種を排除する作用を持つため、長期的に魚類群集全体の種数や密度を低下させることを見い出した。 漁業対象種のふ化放流は、国内外に広く普及している。だが、こうした放流では自然界には生じえない規模の大量の稚魚を放つため、生態系のバランスを損ね、魚類群集全体に長期的な悪影響を及ぼす可能性が指摘されていた。今回の研究結果は、持続可能な魚類の資源管理や生物多様性保全に対する放流の効果は限定的であり、生息環境の復元などの別の抜本的対策が求められることを示している。 研究論文は、米国科学アカデミー紀要(PNAS:Proceedings of the National Academy of Sciences)に2023年2月7日付けで掲載された

(中條)

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