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カーボンニュートラルの実現へ 技術で貢献するスタートアップ5社

「第49回 NEDOピッチ(カーボンニュートラル ver.)」レポート

特集
JOIC:オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会

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2050年カーボンニュートラルに向けた政策動向

 最後にカーボンニュートラルに向けた国の政策について、経済産業省 エネルギー・環境イノベーション戦略室 室長補佐の金子周平氏が登壇した。

経済産業省 エネルギー・環境イノベーション戦略室 室長補佐 金子 周平 氏

 カーボンニュートラルを巡る世界の状況について、近年は期限付きのカーボンニュートラル目標を表明する国と地域が増えている。また、金融機関の動きとしては全世界でESG(環境、社会、ガバナンス)投資の合計額は2020年に35.3兆ドルにまで増加するなど、「すでに脱炭素社会を前提に取組が進められている」という。

 さらにサプライチェーンの脱炭素化も加速。アップルなどは2030年までに脱炭素化をするとしており、それに合致しなければサプライヤーになれないとしている。 こうした中で、対応を迫られるというだけでなく、むしろこれらをチャンスにして、「グリーン×デジタル・スタートアップ」という企業も出てきている。

「例えば、中国のスタートアップの中には、カーシェアなど低炭素化した商品にポイントを付与し、そのポイントで砂漠地域の植林と交換できるサービスを運営するものがあります。また、ディープテック系では日本のつばめBHBのようにアンモニアの新しい合成技術を開発するなど、いろいろなスタートアップが出てきています」

 こうした国際動向の中で日本の取り組みは、2020年10月に当時の菅総理がカーボンニュートラルの表明をしたところから始まる。これ以降、グリーン成長戦略の策定や2030年度の温室効果ガス排出量削減目標の表明、第6次エネルギー基本計画の策定、地球温暖化対策計画などの策定を行ってきた。

 この中のグリーン成長戦略においては、脱炭素をコストとして捉えるのではなく成長の機会と捉えて、 エネルギー関連や製造関連など14の重点分野を選定し、予算や金融規制改革、標準確定など様々なサポートによって、企業の前向きな挑戦を後押ししていくことを戦略として立てきた。

「これまでエネルギー基本計画で2030年、グリーン成長戦略で2050年の目標に対する取組が示されてきた中で、これら点と点をつなげた足元の取り組みをどう進めていくべきか、というところで、いま、クリーンエネルギー戦略というものを検討しています。2022年の5月に中間整理を公表し、それ以降はGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で検討しています」

 クリーンエネルギー戦略の中間整理は2章で構成されています。第1章ではウクライナ危機や電力需要のひっ迫を踏まえて、エネルギー安全保障の確保に万全を期すこと、その上で脱炭素を加速させるための政策を整理しなければいけないという大前提の確認を行っています。第2章では、エネルギーを基点とした産業のGXや、産業のエネルギー需給構造の転換、地域や暮らしの脱炭素に向けた取り組みなどについてまとめている。

 日本の産業の課題については、「設備投資や研究開発費の支出が諸外国と比べて消極的で、稼ぐ力は低い水準だと分析されている」とし、脱炭素と日本経済の成長発展を同時に実現することが求められており、そのためにはエネルギー需給構造の転換と産業構造の大幅転換も行う必要があるとした。

 最後に金子氏は「イノベーションの創出という観点からみると、いかに需要を作っていくのか、いかに需要のあるイノベーションを進めていくのかが、社会実装において重要になってくると思っています。政府としてもしっかり取り組み、スタートアップに関してもしっかり支援していきたいと考えています」 と締めくくった。

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