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カーボンニュートラルの実現へ 技術で貢献するスタートアップ5社

「第49回 NEDOピッチ(カーボンニュートラル ver.)」レポート

特集
JOIC:オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会

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「折る」ことでモノの表面構造を改善
様々な生産課題の解決に貢献

 株式会社OUTSENSEのCTO 石松慎太郎氏が登壇。同社は大田区のテクノ「FRONT森ヶ崎」に拠点を置くスタートアップだ。「折る」ことに焦点を当て、「折って当たり前が変わる」ということをビジョンに掲げている。

株式会社OUTSENSE CTO 石松 慎太郎 氏

「弊社は宇宙を想定して始まった企業です。月や火星に住めないのは当たり前という考えをどう変えていくか、ということを最初のビジョンに掲げていました。人が住めるようにするにはどうするか考えたときに、家を折りたためたらすごく大きな家ができて住みやすいのではないかと考えまして、そこから『折る』というところに注目しました。宇宙だけでなく、災害時の危機的な状況、過酷な環境のところに、折りたたんだ物を持っていけるということをコンセプトにしています」

 サービスとしては折りを「学ぶ」、「考える」、「作る」の3つを展開している。1つ目は折ることを用いた「教育ワークショップ」。2つ目が課題解決や新規事業の創出プランなどの「折り受託サービス」、そして3つ目が複雑な形状であっても折り紙の技術を使って壁面を作る、展示ブースやショーケースの構築を行う「SORIORIサービス」だ。

「折り紙は、紙を折って形を作る遊びです。鶴を折ったことがある方が多いと思いますが、折り鶴を開いてみると、すごく綺麗な模様が出てきます。この模様を部分的に観察していくと、幾何学的なパターンが生まれてきます。この幾何学なパターンが、実はいろいろな特性や機能を生み出すことができます。それを工学分野へ応用していくのが『折り工学』というもので、この『折り工学』を用いて弊社ならではの製品化や、新規事業開発を行っています」

 石松氏は、「折り工学」を利用することで3つのことができると語る。1つが折り畳める(Foldability)という特性が付与できることだ。これにより、輸送性や収納性を高めることができる。また、折り特有の機能(Metamaterial)として、衝撃吸収性や高剛性を持たせることもできる。そして最後が複雑な形状を簡単に製造できる(Complex modeling)だ。生産性や施工性の向上が見込まれるのだ。

「これらの価値を、弊社のコア技術『ORIFACE』を用いて、様々なモノを包む表面(サーフェイス)の構造に応用しています。例えば包装資材だったり、乗り物の外装部であったり、住居だったり。これらの課題解決に対して『折り工学』で機能を付与してサポートしています」

 折ることによって生まれる機能や特性を生かして、輸送性や衝撃吸収性などを高めることができる。それは、CO2排出削減をはじめとした様々な課題解決のサポートにつながる、というわけだ。

植物と樹木の20%を占める「ヘミセルロース」から
世界で初めてプラスチック樹脂を開発

 株式会社事業革新パートナーズ 代表取締役の茄子川仁氏はエクアドルからリモートで参加。同社は植物と樹木の約20%を占める多糖類である「ヘミセルロース」を活用したバイオプラスチック樹脂(「HEMIX」)の開発、製造を行うスタートアップ。石油由来樹脂と比較するとCO2排出量を30%以上削減することができ、また土中や海中での生分解性100%で、プラスチックスごみ問題の解決に貢献している。

株式会社事業革新パートナーズ 代表取締役社長 茄子川 仁 氏

 また、間伐材や食品飲料工場で排出される搾りかすなどの焼却処分されている廃棄植物を樹脂原料として製品化し、生分解またはリサイクルする循環システム構築することで、CO2排出量を最小化する提案をしている。

「ヘミセルロースという多糖類を元にしたバイオプラスチックの樹脂材料の開発に成功したのは当社が世界で初めてになります。現在日本だけでなく、海外を含めて量産の立ち上げを行っている最中です。現在も南米のエクアドルで、アマゾンの熱帯雨林保護と、ガラパゴス諸島の海洋環境改善を目的として、現地の方々と工場の立ち上げを行っています」

 元々、株式会社事業革新パートナーズは創業から、金型や射出成形、素形材などの製造分野のコンサルティングを行っていたそうだ。そんな中でバイオ材料を用いた唯一の製品を作りたいという考えからバイオプラスチック樹脂の開発をスタートした。

 その中で注目したのが、樹木の20~30%を占める大きな成分ながら単体での用途が見つかっていなかったヘミセルロースだ。

「ヘミセルロースは世界の森林生産高による推計量で年間10億トン程度発生していて、これまでは全て燃やされたり、捨てられたりしていましたこれを使うことに可能性があるのではないかと考えました」

 そして開発したのがヘミセルロース活用バイオ樹脂「HEMIX」だ。ピッチでは他の樹脂と組み合わせた物や植物由来100%など、代表的な3つのパターンを紹介。どのように組み合わせるかによって性質が変わってくるため、様々な組み合わせをデータ化して提供していくとしている。日本市場では精油由来の樹脂を組み合わせたパターンが多いが海外では植物由来100%のニーズが非常に高まっているという。同社では戦略的に両方追求しているそうだ。

 ヘミセルロースの価値として大きいのが、潜在資源としての量が非常に大きいということだ。また、CO2の削減、土の中や海の中でも分解できる分解性の高さがある。さらに、透明にしたり、強度や耐熱性を高めたりする技術もある。

「特にお客様から評価されているのが流動性です。熱を加えると溶けやすい特性が、生産性能の高さにも寄与しています。川崎の製造センターでは植物からの成分の抽出、樹脂化、そして成形まで一貫して行っており、今後、中規模の量産提供まで考えております」

「HEMIX」は射出成形だけでなく、シート、フィルム、ペットボトル、繊維など、様々な製品に対応できるそうだ。株式会社事業革新パートナーズでは同社が研究開発をにない、プロトタイプのレシピを開発。それをライセンス契約することで、世界中の向上メーカーがバイオプラスチックを地産地消できる仕組みづくりを考えている。

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