このページの本文へ

理研など、心筋の脂肪酸代謝を近赤外光で画像化

2022年10月26日 06時46分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

理化学研究所(理研)、北海道大学、大阪大学の研究グループは、心筋の脂肪酸代謝を近赤外線で画像化するプローブの開発に成功した。脂肪酸は心筋のエネルギー源であり、その代謝状況は心臓の健康度合いを示す。心筋の脂肪酸代謝を測定するには、放射性医薬品を投与し、体内に取り込まれた部分から放出されるガンマ線を専用の装置で体外から計測する手法が用いられているが、コスト面で課題があった。

理化学研究所(理研)、北海道大学、大阪大学の研究グループは、心筋の脂肪酸代謝を近赤外線で画像化するプローブの開発に成功した。脂肪酸は心筋のエネルギー源であり、その代謝状況は心臓の健康度合いを示す。心筋の脂肪酸代謝を測定するには、放射性医薬品を投与し、体内に取り込まれた部分から放出されるガンマ線を専用の装置で体外から計測する手法が用いられているが、コスト面で課題があった。 研究グループは、赤い光が身体を通りやすいという性質を利用して、可視光の赤い光よりも波長が長い700〜900ナノメートルの近赤外光を利用した新たなプローブを開発。従来の放射線を使った計測手法で利用するBMIPP(長鎖脂肪酸類似体)の放射性ヨウ素の代わりに、波長700ナノメートル以上で蛍光発光する「Alexa680」を結合させ、長鎖脂肪酸「Alexa680-BMPP」を合成した。 培養したヒト心筋細胞にAlexa680-BMPPを投与した実験では、対照群の色素に比べて心筋細胞に取り込まれる量が有意に多く、長鎖脂肪酸として機能することが分かった。また、生きたマウスでの実験では、注入後30分で心臓における近赤外蛍光強度が最大に達し、その後は時間の経過に伴って蛍光強度が減少していくことが確認された。 研究チームは、今回の技術を利用することで、これまでは放射線イメージングでしか検査できなかった心筋の脂肪酸代謝を、より簡便に画像化できるようになるとしている。研究成果は10月7日、「アナリスト(Analyst)」誌に掲載された。

(笹田)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ