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波がプラズマの熱を運ぶ過程を初観測=核融合研など

2022年10月25日 19時01分更新

文● MIT Technology Review Japan

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核融合科学研究所と東北大学などの共同研究チームは、同研究所のプラズマ生成装置において、プラズマの速度分布の時間変化を詳細に計測。高エネルギー粒子が作り出した波が、「ランダウ減衰」と呼ばれるプロセスによって熱を運び、プラズマを加熱していることを世界で初めて観測した。

核融合科学研究所と東北大学などの共同研究チームは、同研究所のプラズマ生成装置において、プラズマの速度分布の時間変化を詳細に計測。高エネルギー粒子が作り出した波が、「ランダウ減衰」と呼ばれるプロセスによって熱を運び、プラズマを加熱していることを世界で初めて観測した。 研究チームは、高速の原子をプラズマに入射し、プラズマから発せられる光の波長分布からプラズマ粒子の速度分布を高速で計測する方法を用いて、10キロヘルツ(1秒間に1万回)という超高速でプラズマ粒子の速度分布の時間変化を計測できるシステムを新たに開発。同システムを用いて、核融合科学研究所の超伝導ヘリカル型プラズマ生成装置におけるプラズマ粒子の速度分布の時間変化を詳細に計測した。 その結果、プラズマ内部での電磁波の発生に伴って、高速粒子ビームが減速するとともに、プラズマ粒子の速度分布の形状が歪んでプラズマが加熱されることを世界で初めて観測した。さらに、速度分布の歪みの理由は、ランダウ減衰と呼ばれるプロセスで高速粒子ビームのエネルギーが電磁波に移り、その電磁波のエネルギーがプラズマ粒子に移るせいであること、電磁波の発生の1万分の1秒後には速度分布の歪みが始まること、などを示した。 核融合発電では、高温のプラズマ中の核融合反応で発生した高エネルギー粒子がプラズマを加熱して更なる核融合反応を促進させる必要があり、そのためには、高エネルギー粒子が作り出した波でプラズマを加熱できるかどうかがポイントとなる。今回の研究成果が基盤となって、核融合発電実現に向けたプラズマの自己加熱の研究や、地球磁気圏におけるプラズマ加熱の研究が進展することが期待される。 研究論文は、英国の科学雑誌、コミュニケーションズ・フィジックス(Communications Physics)に9月28日付けで掲載された

(中條)

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