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医師の診断精度を上回る乳がん超音波検診AI、慶應大などが開発

2022年09月02日 06時30分更新

文● MIT Technology Review Japan

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慶應義塾大学やフィックスターズなどの研究者で構成する共同研究チームは、深層学習を用いた人工知能(AI)による画像診断システムを開発。乳房超音波検査で乳がん検診を受診した患者が、精密検査を受けるべきかどうかを医師の診断を上回る精度で判定できることを示した。

慶應義塾大学やフィックスターズなどの研究者で構成する共同研究チームは、深層学習を用いた人工知能(AI)による画像診断システムを開発。乳房超音波検査で乳がん検診を受診した患者が、精密検査を受けるべきかどうかを医師の診断を上回る精度で判定できることを示した。 畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)を利用し、乳房超音波画像を診断する際の国際的基準である「BI-RADS(breast imaging reporting and data system)判定基準」に基づいた診断を実施するもの。BI-RADSでは病変の特徴を基に画像を1から5までのカテゴリーに分類し、スクリーニング検査でカテゴリー4以上と判定された患者は組織生検を含む精密検査を受けることを強く推奨されている。今回のAI診断システムは乳房超音波画像に含まれる病変が、カテゴリー4以上なのか、3以下なのかを判定する。 慶應義塾大学が提供する4028枚のアノテーション付き乳房超音波画像を教師データとして訓練し、教師データとは異なる3166枚の乳房超音波画像(3656病変を含む)を対象として診断したところ、感度91.2%・特異度90.7%の精度で判定できた。この結果は、日本乳がん検診精度管理中央機構が認定する「乳がん検診超音波検査実施・判定医師」の合格基準となる感度80%・特異度80%を上回る。さらに、外科専門医10人を含む、20人の医師による乳房超音波画像診断の結果と、AIによる診断結果を比較したところ、AIが統計学的に有意に優れた精度で判定した。 今回のAI診断システムを、乳房超音波スクリーニング検査における医師の診断補助として利用することで、見逃しや過剰診断を防ぎ、精度の向上や施設間格差の解消などに貢献することが期待される。 研究成果は、2022年8月3日付けで、国際科学誌キャンサー・サイエンス(Cancer Science)オンライン版に掲載された

(中條)

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