今回のひとこと
「通信だけでは要望に応えられない。非通信を含めたソリューション提供の要望は、半数近くになっており、質の良いサービスを、より安く利用してもらうことが、NTT東日本の本業として重要になってきた」
変化する地域社会のDX
NTT東日本は、光通信や電話回線を提供する地域通信事業を担ってきた企業であることは周知のとおりである。
だが、ユーザーニーズの多様化にあわせ、通信機能に自社および他社の製品やサービスをセットにして提供するソリューション提案を加速しており、その内容は多岐に渡る。
NTT東日本の井上福造社長は、「ここ数年、通信を使いながら、どんな解決ができるのかを模索してきた。営業担当者を『地域社会のコンシェルジュ』と呼び、顧客目線の価値観で、課題抽出や解決策を提案し、ICTやDXの力で地域循環型社会の実現に取り組んできた」とする。
だが、コロナ禍で、地域社会のDXにも変化が見られているという。
「コロナ禍以前の地域社会の最大の課題は人手不足への対応であり、そこにデジタルが貢献していた。しかし、当時は、『デジタル化=オンライン』ではなかった。ところが、コロナ禍では、非接触という要素が加わり、デジタル化にはオンラインが必須となった」と指摘する。
その一方で、「多くの企業が、事業継続のために、いやおうなしにデジタル化やオンライン化に舵を切ったが、しばらくすると従来の非効率さが見えたり、デジタルやオンラインの新たな力が見えたりしてきた。最近では、社会全体がこの変化を前向きに捉え、『デジタル×オンライン』を前提に、事業や社会生活を見直す動きが進んでいる」とし、「通信はあらゆる事業や社会生活に必要不可欠な部品となってきたが、通信だけでは、要望には応えられない。質の良いサービスを、より安く利用してもらうことが、NTT東日本の本業として重要になってきた」と述べる。
現在、NTT東日本に寄せられる要望のうち、非通信を含めたソリューションへの要望は、半数近くを占めるという。
ここでは、「人手不足への対処」、「地域産業の活性化」、「魅力ある街づくり」、「地域アセットの有効活用」、「デジタル人材の育成」など多岐に渡っており、農業の省力化や中小企業のDX、セキュリティ強化などの取り組みも増えている。
「リモートワークを導入したいという通信の要望を入口にして、社員の自宅での利用環境までサポートしてほしい、勤怠管理や就業規則の見直したいというように、非通信領域に広がるケースが見られている」という。
そして、「こうした要望に応えるためには、NTT東日本の事業領域を広げることが必要不可欠であると痛感している。様々な分野にパートナーをつくり、連携したソリューションを提供していくことが大切である」とし、「地域密着は、NTT東日本の大きな強みである。地域の特性にあわせて、分野ごとに多様なソリューションを提供し、構築から運用までをワンストップで任せてもらえる企業になることを目指す」と述べた。
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