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ロードマップでわかる!当世プロセッサー事情 第647回

RISC-Vベースの緩いAI向けアクセラレーターX280 AIプロセッサーの昨今

2021年12月27日 12時00分更新

文● 大原雄介(http://www.yusuke-ohara.com/) 編集●北村/ASCII

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X280はAIをフルに活用するアプリケーションではなく
処理の一部に少しAI推論が入る用途に最適

 このRVVにSiFiveの独自拡張命令を組み合わせるとどの程度高速化されるのか? という話だが、行列演算で12倍、MobileNet V1の推論で4倍といった数字が示されている。

すべての演算が12倍、というわけではなくAI処理でよく利用されるものが最大12倍高速化される、という程度だとは思う

MobileNet V1の推論で4倍の方が現実的な数字に見える。単に畳み込みのみならず、Depthwidth畳み込みにも効果的なのが特徴だ

 本格的なAI推論をX280だけでやるのは厳しいとは思うが、そもそもX280のベースになるU74はLinuxが動く(=Linux動作に必要なMMUを始めとした機構が搭載されている)汎用のコアで、しかも最大8コアまでのマルチプロセッサーに対応した、アプリケーションプロセッサーに適した構成である。

 AIをフルに活用するアプリケーション向けではないが、処理の一部に少しAI推論が入るといった用途であれば、専用のアクセラレーターを搭載しなくてもX280だけで事が足りそうだし、そうした用途を狙ったいわば「緩いAI向けアクセラレーター」とでもいうべきものがこのX280ということになる。

 今のところRISC-Vは、PC向けというよりは組み込み機器向けといった方がメインで、X280もまさしくそういう用途を狙った製品である。SiFive以外にもAIを意識したRISC-V CPU IPは多く出ているが、少なくとも筆者がこれまで見た中では一番洗練された実装になっているように見える。

 ちなみにSiFiveは現時点ではSiFive Intelligenceとして追加されたカスタム命令がどんなものかに関しては一切公開していない。あくまでも既存のフレームワークを経由すると、自動的にカスタム命令が使われる形の実装になっているようだ。

フレームワークがTensorFlow以外にTensorFlow Liteをサポートしているあたりが、それほど重い処理をさせるつもりはそもそもないことを物語っているようにも思える

 同じRISC-Vのメンバー企業であっても、カスタム命令に関しては真似されたくなかった、というあたりなのかもしれない。

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