情報銀行に求められる安心・安全性
では、なぜ、三菱UFJ信託銀行が、情報銀行サービスに乗り出すのだろうか。長島社長は次のように語る。
「三菱UFJ信託銀行は、「『安心・豊かな社会』を創り出す信託銀行」をキャッチフレーズにしている。年金信託、投資信託など、お客様から託された財産を信託として、自身や家族のために管理、運用していくことが役割である。今後は、これらの財産だけでなく、パーソナルデータをはじめとした情報を、適切に管理、運用することで、暮らしを安心、豊かにしていきたい」
情報銀行をこれまでの銀行業務に置き換えてみると、個人はお金の代わりにデータを預け、銀行が企業にお金を貸し出すようにデータを提供し、金利の代わりに対価が個人に支払われるというわけだ。
また、「安⼼・豊かな社会」の実現に向けて、三菱UFJ信託銀行では、これまでにも数多くの商品やサービスを⽣み出し、課題を解決してきたとする。
例えば、高齢化の問題については、「つかえて安心」と呼ぶサービスを提供。高齢者が認知症になってしまい、口座が使えなくなった場合にも、代理人が引き出して、安心してお金が使い続けられるようにした。
「今回のDprimeも、『安心・豊かな社会』を実現するサービスのひとつになる。三菱UFJ信託銀行が、従来から取り組んできたサステナビリティ活動にもつながる。サステイナブルな社会の形成に少しでも役立てるのではないか」と位置づける。
ただ、三菱UFJ信託銀行は、これまで情報ビジネスをやってきたわけではない。
長島社長は、「チャレンジングなビジネスである」としながらも、「情報銀行で大前提となるのは、パーソナルデータの厳格な管理である。信託銀行は管理するのが役割。データ管理においては、長年の歴史がある。これをアドバンテージとして、信頼してもらえるはずだ」と意気込む。
信託銀行業務では、株主名簿や年金受給者名簿、遺言などのデータを管理。ここで培った高度なセキュリティ基盤を持つ。そこには長年の実績がある。
「データを可能性に変えよう」がDprimeのコンセプトだ。デジタル社会における三菱UFJ信託銀行の新たな挑戦が始まった。
![](/img/blank.gif)
この連載の記事
-
第594回
ビジネス
自動車工業会は、今年もJapan Mobility Showを開催、前身は東京モーターショー -
第593回
ビジネス
赤字が続くJDI、頼みの綱は次世代有機EL「eLEAP」、ついに量産へ -
第592回
ビジネス
まずは現場を知ること、人事部門出身の社長が続くダイキン -
第591回
ビジネス
シャープが堺のディスプレーパネル生産を停止、2期連続の赤字受け -
第590回
ビジネス
生成AIに3000億円投資の日立、成長機会なのか? -
第589回
ビジネス
三菱電機が標ぼうする「サステナビリティ経営」、トレードオフからトレードオンへ -
第588回
ビジネス
富士通の子会社でDX専門のコンサルティングをするRidgelinez -
第587回
ビジネス
メーカー自身が認定し、工場検査後に販売するパナソニックの中古家電 -
第586回
ビジネス
マイクロソフト、日本への4400億円のAI/データセンター投資の実際 -
第585回
ビジネス
日本市場の重要性を改めて認識する米国企業、変革期にある製造業がカギ -
第584回
ビジネス
NTT版の大規模言語モデル(LLM)、tsuzumiの商用化スタート、勝算は? - この連載の一覧へ