これまでIT政策に深く関わってきた平井大臣であるが、いまの日本の状況については、「デジタル敗戦」と表現する。
「これまでのITインフラやデジタル化への投資、IT政策は、国民の期待にまったく応えることができなかった。欧米や中国と比べても、光ファイバーやモバイル通信網のカバー率といったインフラ整備では負けていない。だが、パフォーマンスが悪かった。その理由は、すべてが中途半端であったという点に尽きる」と指摘する。
中途半端と語る理由については次のように述べる。
「一部の人は使えるが、全員が使えないという状況だったり、最後の部分までデジタルで完結することができない状況にあったり、やり方を見直さずにデジタル化だけを進めたことで成果が生みにくいということがあった。また、国民の期待もそれほど高くはなかったので、目標を達成できなくても、世間から攻められない状況もあった」
だが、新型コロナウイルスの感染拡大とともに、社会環境や生活スタイルが変化。デジタルに対する国民の関心が急速に高まっている。「これまでのスピードやマインドセットでは通用しなくなってきた。走りながら考え、決断をしながら、立ち止まらずに一気に行く必要がある。骨太の方針のなかで、2006年には、デジタルという言葉は1回も出ていない。2019年は53回出ていたが、今年は105回も出ている。デジタル関連が、政策の一丁目一番地になるのは、日本では初めてのことだ。国民の関心も高まっており、菅首相によるデジタル庁創設の指示も時期を得たものである。2020年は大きな歴史の転換点になる」とする。
平井大臣は、デジタル化に対する基本的な考え方を示してみせる。
「デジタル化に対する、いままでのやり方を根本的に変えなくてはいけない。デジタル化は手段であって、目的ではない。トランスフォーメーションが大切である。そして、人中心で利用者が本当の意味で納得しなければ、やる意味がない。そのために日本が目指すべきデジタル社会は、いったいどういう社会なのか、ということを示す必要がある」とし、「Society 5.0は、一般の人たちにとって、身の回りがどう変わるのかというイメージがほとんどない。QoLが高い生活はどういうものか、人間中心で、人間に優しい社会はどういうものか、高齢者にも優しいデジタル社会はどうものかを念頭においたデジタル化が必要であり、最終目標は、デジタルを意識しない、デジタル社会の実現である。そして、格差を作らず、誰も取り残さないという点が重要である。高齢者や障害者に対する機器へのアクセシビリティや、UIおよびUXの問題もより重要になってくる。もし、高齢者が躊躇するインターフェースや、障害者に使い勝手が悪いシステムがあったとしたら、それは開発した方が悪いという覚悟で進めなくてはならない」とする。
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