R35 GT-Rも初代から数えると12年が過ぎたが
「NISSAN GT-R」が誕生して今年で12年目を迎える。初期に購入した方の中には、車両がくたびれてきたこと、パフォーマンスの面で現行モデルに劣ること、そして新車登録13年目から始まる「自動車税・重量税の重課」のことも考えると、現行GT-Rに乗り換えを検討しても不思議ではない。
しかし、長年付き合ってきた愛車はそう簡単に別れを告げるのは惜しい。そこで検討してもらいたいのは、日産自動車のレース活動を行なう連結子会社ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル(以下、NISMO)のさまざまなチューニングプログラム。今回、いくつかあるメニューの1つであるクラブマンレーススペック(CRS)に触れてきたのでレビューしたい。
結論から言えば、このファインチューニングを施したGT-Rは、誰が乗っても絶賛するであろう、素晴らしい1台であった。
水野イズムと田村イズムのGT-R
日産の象徴であるNISSAN GT-R(R35)。2007年10月24日の発表以来、そのパフォーマンスが常に最先端であり続けているのは誰もが知るところ。それは「最新のGT-Rこそ最高のGT-R」とするモデルイヤー(MY)制度を採るからだ。逆に言えば、新しいGT-Rが出る度に、形は同じであれど、過去のGT-Rはパフォーマンス面で新型に劣ることが宿命づけられている。事実、発売当初は480馬力であったエンジン出力は、現在570馬力まで引き上げられている。
そんなNISSAN GT-Rに大きな転機が訪れたのは、チーフ・プロダクト・スペシャリスト(商品企画立案責任者)が水野和敏氏から田村宏志氏に移り、2013年11月19日に発表されたMY14から。それまでのGT-Rは、水野氏が速さを追い求めてきたR(レーシング)路線であったのに対し、架装車など特殊車両畑出身の田村宏志氏はロングドライブ、つまり「グランドツーリング」(GT)路線がこれからのスポーツカーに必要であるとの考えを明確にした。
田村氏はNISSAN GT-Rの内容をGTとRに区別し、GT路線をノーマル仕様として、速さを求める人に向けてGT-R NISMOを誕生させた。そのGT-R NISMOに「NISMO N Attack Package」を取り付けたモデルが、2013年9月30日ドイツ・ニュルブルクリンクサーキットに持ち込まれ、「7分8秒679」という、それまでNISSAN GT-R自身が持つベストラップを一気に10秒以上も短縮する量産車最速タイムを樹立した。
普通に考えれば、速くて乗り心地がよくなった現行のNISSAN GT-Rは正常進化だ。筆者も何度かMY17のNISSAN GT-Rに乗ったが、とんでもなく速いのに、とんでもなく運転しやすく快適という、まさに夢のような1台であった。
しかし、NISSAN GT-Rを愛する人の中には「速さこそすべて」という人もいるだろう。GT-R NISMOは、そのような人のために用意されているのだが、その価格はなんと2420万円! 現行GT-Rのベーシックグレードの2倍という恐ろしいプライスタグが付けられている。
そこまでいかずとも、現行GT-Rラインアップの中で走りに比重を置いたグレードである「NISSAN GT-R Track edition engineered by NISMO」も1463万6600円。セレブでもない限り、気軽に「乗り換えましょう」といえる金額ではない。
そうなると、手持ちのGT-Rを下取りに出して新しいGT-Rに乗り換えるのではなく、そのお金でリフレッシュやチューニングをするという考えが生まれてくるのも不思議な話ではない。そのリフレッシュやチューニングを、SUPER GTをはじめ日産のモータースポーツ活動を行なっているNISMOが担当しているとしたらどうだろう?
SUPER GTのみならず、市販車をベースとしたGT3車両の製作も手がけているNISMOが、サーキットで得た知見と、長年GT-Rに触れてきた経験。そして日産ワークスという看板のもとで、自分の愛車をリフレッシュやチューニングしてくれる。考えただけでトキメキを覚えてしまうのは筆者だけではないハズだ。
この連載の記事
-
第433回
自動車
スズキ「スイフト」が4代目に! シャープな顔と安定性と低重心さを感じるデザインが魅力 -
第432回
自動車
EVなのにドリフト!? 変速ショックもあるヒョンデ「IONIQ 5N」に新 唯も興奮! -
第431回
自動車
エコもなんのその! V8エンジンで525馬力のSUV「ディフェンダー」は趣味車として最高の選択肢 -
第430回
自動車
燃費良し走り良し! スズキ「ソリオ バンデッド」のハイブリッドが売れてる5つの理由 -
第429回
自動車
Honda「オデッセイ」は2列目シートの使い勝手と座り心地が最高すぎた! -
第428回
自動車
砂漠も山道も走れるJeep「WRANGLER SAHARA」は東京砂漠も楽勝だ! -
第427回
自動車
ホイールで走りが変わる!? ホンダ「VEZEL」の専用ホイールを新 唯がテスト! -
第426回
自動車
SUV+BEV=最高! メルセデス・ベンツの電動SUV「EQB」はアイドルも納得の乗り心地 -
第425回
自動車
雪道も砂漠もドンと来い! ポルシェ「911 ダカール」は悪路を得意とするスーパースポーツ -
第424回
自動車
今買うならMAZDA2の前モデルがお買い得な5つの理由 -
第423回
自動車
ホンダの新型アコード試乗! ハイブリッドなのにエンジン車のようなユニークな走り - この連載の一覧へ