GPUなしモデル急増の理由は歩留まりの悪さ
GPUなしモデルが大量に湧いた理由は、おそらく昨年10月からの14nmプロセスの増産にからんで相当歩留まりが下がっており、ただしスケジュール的に歩留まりを引き上げるのを待っているゆとりは現在のインテルにはなく、やむなく低い歩留まりのまま増産しているのが、このGPU無効化の最大の要因と思われる。
どういうことかというと、もともとインテルは工場に関してCopy Exactlyというポリシーを貫いている。“Copy Exactly”とは「完璧にコピーする」の意味である。
工場の中には大量の製造機械が導入されており、そして外部からさまざまな材料(シリコンだけでなく、露光やエッチングなどであらゆる気体や液体、研磨剤など)を搬入して、これを組み合わせて製造している。
ところが製造機械などは、同じ仕様で作られたものだとしても、ミクロン単位のずれは当然あるし、材料もロットによるバラつきなどは当然ある。
ましてや、同じところに並んでいる工場なら1ヵ所からまとめて仕入れることでバラつきを抑えるなどが可能かもしれないが、14nmはオレゴンとアリゾナ、ニューメキシコ、イスラエルにあり、当然ながら材料の納入業者なども異なってくる。
こうしたケースで、完全にコピーを実現するには、機械の調整や材料の均一化などに結構な時間を要する。では、その時間を待たずに量産を開始するとどうなるかというと、もともとの状態では起こらなかった現象が起きたりすることは不思議ではなく、これは歩留まりを下げる方向にしか普通は働かない。
こういってはなんだが、おそらく今回の増産開始前の14nmプロセスの歩留まりは90%を相当上回る高いレベルにあったはずだが、現状は60%くらいまで落ちていても不思議ではない。
これは、14nmのKaby Lakeを考えればわかりやすい。Kaby Lakeのダイを見ると、おおむね40%程度がGPU、40%程度がCPUで、残り20%がPCI Expressやメモリーコントローラーなどに費やされている計算だ。
もしここで歩留まりが低ければ、Kaby Lakeの世代でGPUに欠陥があり、無効化しないといけないダイが大量に生まれたであろうことは想像に難しくない。ところが実際にはKaby Lakeは順調に製造されており、全品GPUありの状態で出荷されている。
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