ブラザーらしい新しいビジネスモデルへの転換が必要
「プリンティング領域を見ると、紙離れによる印刷の減少に加えて、消耗品の純正品率の低下が継続すること、所有から利用へと、顧客の購買行動が大きく変化するなか、サービスニーズが多様化していることなど、取り巻く環境が変化し、状況はさらに厳しくなる」とし、「むしろ、いまのプリンティング事業はできすぎていると思っている。プリントボリュームの減少や、互換インクの広がりを考えると、増益は見込めない。通信・プリンティング機器は、市場が縮小するなか、売上げ規模は維持したい」とする。
「プリンティング領域での勝ち残り」は、成長戦略ではなく、縮小市場のなかでの事業規模の維持が中心となる。
この取り組みのなかで同社が掲げたのが、「ブラザーらしい新たなビジネスモデルへの転換の加速」だ。
プリンティング事業での勝ち残り戦略もきちっとやっていく
個人およびSOHO向けには、大容量インク/トナーモデルの強化や、消耗品のバンドルといったTCOに優れた製品提案により、本体収益を向上させるほか、すでに提供を開始している「refresh」サービスのように、消耗品を手軽に購入できる仕組みを活用。
このサービスを拡充することで、顧客がプリンティング環境に気をつかわずに、自動的にインクやトナーを発注したり、月額定額モデルとしてサービスを提供したりする仕組みを加速するという。さらに、P-TOUCH CUBEなど、スマホから利用できるアプリを充実して、プリンティングやラベリングの利便性向上、新たな活用シーンなどを提案していくという。
また、プリンティング領域において、もうひとつの主要市場である中小企業向けには、チャネルとの緊密な協業により、本体、サービス、消耗品を対象とした契約型ビジネスモデルを強化。中小企業の顧客が求める簡易ソリューションを提供し、顧客との直接のつながりを強化するという。
こうした「ブラザーらしい」とする新規ビジネスモデルの販売台数比率は、2018年度には15%の見通しであるものを、今後3年間で倍増させ、30%の構成比にまで高める考えだ。
これらの取り組みに加えて、高付加価値を持った上位機種へのシフトを加速し、A4プリンターメーカーというユニークなポジションを最大限に活用したOEM供給の拡大、通信・電気配線用マーキングや製造業向けラベルプリンター事業の拡大、バーコードプリンターによる自動認識領域など、特殊業務用途へのビジネス拡大などを図る。
「プリンティング事業での勝ち残り戦略をきちっとやっていく」と、ブラザーの佐々木一郎社長。プリンティング事業領域における勝ち残りが、次世代の柱に位置づける産業用領域の成長を支えることになる。
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