いまだに現役のPS/2コネクターが誕生
このPS/2で、IBMはさまざまなものを変更した。まずキーボードやマウスのコネクターは、PS/2タイプと呼ばれる小型のものを策定し、これはそのまま広く互換機メーカーにも採用されることになった。
おそろしいことに、いまだに最新のゲーミングマザーボードにはこのPS/2タイプのコネクターを搭載しているものがあるため、そろそろ30年を超えている計算になる。
ビデオカードに関しては、Model 30にはMCGA(Multi-Color Graphics Array)と呼ばれる、CGAを拡張したものが新たに制定された。一方、Model 50以上ではVGAが新たに提供され、後には8514/Aを経てXGAも提供されることになる。
FDDは、当時業界で主流だった5.25インチを排して3.5インチのドライブが導入されている。このあたりの新規格については、後追いで互換機メーカーも追従することになった。
バスの転送速度が問題化
独自のI/OバスであるMCAを制定
その一方で大問題だったのがMCA(MicroChannel Architecture)である。MCAのさわりは連載367回のCOMPAQのところで触れたが、改めて説明しよう。
根本的な問題は、XT BusやAT Bus、要するにISAは8088/80286のアドレスバスとデータバスの信号をそのまま出力する、という簡単な構造になっていたことから始まる。
もちろんIBM-PCでは問題にならなかったし、IBM-PC/ATでもそれほど大きな問題にはならなかった。理由は、当時のバスの速度はCPUの動作周波数に同期していたからだ。4.77MHz(IBM-PCやIBM-PC/XT)あるいは6/8MHz(IBM-PC/AT)程度であれば、周辺回路の動作にも問題はなかった。
ところが80286の動作周波数が10MHzを超え、80386ではさらに高速に動作するが、当時の周辺回路はこの速度に追従するのは困難だった。だからといってI/OバスのためにCPUの動作周波数を下げるのは言語道断だった。
根本的には、CPUから出るデータバスとI/O用のバスを分離することが好ましい。実際にはこれにはかなり時間がかかり、完全に分離されたのはPCIが普及する1993年以降になるのだが、ここでIBMは独自のI/Oバスを制定することを決めた。それがMCAである。
この連載の記事
-
第775回
PC
安定した転送速度を確保できたSCSI 消え去ったI/F史 -
第774回
PC
日本の半導体メーカーが開発協力に名乗りを上げた次世代Esperanto ET-SoC AIプロセッサーの昨今 -
第773回
PC
Sound Blasterが普及に大きく貢献したGame Port 消え去ったI/F史 -
第772回
PC
スーパーコンピューターの系譜 本格稼働で大きく性能を伸ばしたAuroraだが世界一には届かなかった -
第771回
PC
277もの特許を使用して標準化した高速シリアルバスIEEE 1394 消え去ったI/F史 -
第770回
PC
キーボードとマウスをつなぐDINおよびPS/2コネクター 消え去ったI/F史 -
第769回
PC
HDDのコントローラーとI/Fを一体化して爆発的に普及したIDE 消え去ったI/F史 -
第768回
PC
AIアクセラレーター「Gaudi 3」の性能は前世代の2~4倍 インテル CPUロードマップ -
第767回
PC
Lunar LakeはWindows 12の要件である40TOPSを超えるNPU性能 インテル CPUロードマップ -
第766回
デジタル
Instinct MI300のI/OダイはXCDとCCDのどちらにも搭載できる驚きの構造 AMD GPUロードマップ -
第765回
PC
GB200 Grace Blackwell SuperchipのTDPは1200W NVIDIA GPUロードマップ - この連載の一覧へ