今回のことば
「ハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)は、真のクラウドの展開のためのひとつの手段だが、ゴールではない。これから注目されるのはエンタープライズクラウドプラットフォーム」(米Nutanixのディラージ・パンディ会長兼CEO)
ハイパーコンバージドインフラストラクチャー(HCI)分野でリーダー的存在である米Nutanix(ニュータニックス)が、「エンタープライズクラウドプラットフォーム」企業への進化を遂げようとしている。
米Nutanixの創立者であるディラージ・パンディ代表取締役会長兼最高経営責任者(CEO)は、「かつてはコンポーネントごとに提供されていたものが、HCIのような形で統合したプロダクトとして提供されるようになってきた。だが、顧客に対してHCIの環境に移行したほうがいいという提案は通用しない。HCIは目的ではない。真のクラウドの展開のためのひとつの手段である」と切り出し、「だが、HCIにとって大切なのは、単にコンピューティングとストレージを統合したものでなく、様々な要素を用意し、ワンクリッククラウドエクスペリエンスをいかに提供するかという点である。従来はコンピューティングとストレージ、OS、ハイパーバイザーを別々の予算で計上していたが、そうした考え方はいまでは誰もしない。これからの課題は、それと同様に、パブリッククラウドは別の予算として計上するべきなのか、どうかということ。それを議論する時期に入ってきている」とする。
そして「いまは過去30年間のコンピューティングのあり方が置き換わろうとしている段階に入ってきたが、それが達成されているのは、まだ市場全体の10%でしかない」とする。
だがいまこそ、HCIが多くのユーザー企業から注目されているのは明らかだ。
Nutanixが提供するHCIは、スケールアウトクラスター上に展開された、単一のx86ベースのサーバーに、ストレージ機能をネイティブに統合。電力とスペースを削減し、ストレージの複雑性を劇的に緩和し、データセンターのインフラストラクチャーをシンプル化できるのが特徴だとする。「わずか60分で導入でき、あらゆるスケールであらゆるアプリケーションを実行することが可能」だとする。
しかし、Nutanixが目指しているのはその先の姿だという。
HCIベンダーといわれるのはいまだけの話
「パブリッククラウドとエンタープライズクラウドの間にひとつのOSを作れるかどうかということが、これからの課題である。そうしたことをとらえると、HCIは最終目的地ではない。これから注目されるのは、プラットフォームである。ハイパーコンバージェンスが、エンタープライズにどんな影響を及ぼすのかといったことをより深く考え、ニュータニックス自らも新たな形に変わらなくてはならない。目指しているのは、エンタープライズクラウドプラットフォーム。イノベーションには終わりがない。これからも進化を遂げていくことになる」。
Nutanixは、HCIベンダーと呼ばれるが、それも「いまだけの話」というのがパンディ会長兼CEOの見解だ。
一方でパンディ会長兼CEOは、自らがニュータニックスの創業者であるが、社員一人一人が創業者である意識を持つ必要性を訴える。それが、企業のイノベーションの維持につながると位置づける。
「顧客はどのようなものを求めているのか、イノベーションにおけるパートナーはなにを求めているのか。反乱軍としての使命感、当事者としての思考、最前線へのこだわりをもって取り組んでいくことになる」などとした。
ニュータニックスは、100%ソフトウェアカンパニーである
さらにパンディ氏は「日本は特別な国であり、日本から学びたい。オラクルも1990年代に日本に進出し、日本から学んだ経緯がある。いまニュータニックスは日本において、パートナーとの連携を開始しようとしているところであり、いかに早く日本の市場に定着させるかが大切だと考えている」としながら「日本の言葉では、我慢という概念が気に入っている。創業者として考えているのは、さまざまな勢力にどう対抗するのか、どうやって持続可能な成長をするかという点。そのためには官僚的な考え方や否定的な見方をする人たち、イノベーションを阻害する要素にどう対抗するかが大切になってくる。エンタープライズクラウドにおける我慢は、こうした要素に存在している」となどとした。
ニュータニックスは2009年に創業し、現在80カ国以上で展開し、約4500社が導入。日本でも300社以上の企業が採用しているという。
「国内導入ユーザーのトップ15社を見ると、過去18カ月間で3.6倍ものリピートがある。小さく入れて、その後拡張していくというニュータニックスのビジネスモデルがしっかりと動いていることの証である」と、ニュータニックス・ジャパン合同会社の町田 栄作社長は語る。
「データセンターのインフラをインビジブルにすることで、IT部門がアプリケーションやサービスの提供に集中できるようにしている。ニュータニックスは、100%ソフトウェアカンパニーである。日本の市場に向けて、このあたりをきっちりと訴求していきたい。クラウドの世界では迅速性、拡張性、柔軟性が求められ、それを実現するにはソフトウェアが重要になってくる。HCIの先にあるのが、エンタープライズクラウドプラットフォーム。これにより新たな当たり前の世代に変わっていくことになる」とし、こうした取り組みを通じて、エンタープライズデータセンターのリプラットフォームを推進していくことになるという。
また「米国で起きていることが、日本で起こるまでにタイムラグがある。そして、日本の市場は、ユーザーがワンストップでシステムの調達を好むという特徴がある。システムインテグレーター、サービスプロバイダーが実装できるようなものを提供することが、日本では重要になる」などとした。
日本法人であるニュータニックス・ジャパン合同会社の社長に就任した町田 栄作氏は、デルのエンタープライズソリューション担当執行役員から移籍。約2年前にはデルが、他社に先駆けてニュータニックスを採用する際に、日本での推進役となった経験がある。その点では、ニュータニックスのことをよく知る人物でもある。
町田社長体制となり、日本におけるニュータニックスの取り組みは加速することになるだろう。
「ベンダーニュートラルの立場で、日本においてこれまで以上に存在感を発揮したい」と町田社長。今後の日本での舵取りに注目される。
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