今回のことば
「2016年度は、意思を込めた減益計画。将来に向けた投資を行なう1年であり、とくに車載、住宅領域における仕込みを実行する」(パナソニック・津賀一宏社長)
パナソニックが発表した2016年度の業績見通しは、売上高は前年比1%減の7兆5000億円、営業利益は前年比350億円減の3750億円と、減収減益の計画を打ち出すことになった。
成長路線を強く歩み始めたはずのパナソニックではあったが、その歩みにイエローシグナルが灯ったようにも見える。
だが、パナソニックの津賀一宏社長は、そうしたそぶりをみせない。
「2016年度の計画は、売上高、営業利益ともに、前年度を下回る計画となるが、これは、意思を込めた減益である」と語り、「2016年度は、成長への足場固めの年となる。2017年度の増収増益の実現、2018年度以降の増収増益の定着に向けて、足場固めと成長事業への仕込みを行なう」とする。
そして、こうも語る。
「これまでは、利益の確保を優先してきた結果、将来の成長に向けた積極的投資が不十分な事業があったともいえる。2016年度は、減益になっても、将来に向けた投資を行なう。とくに車載、住宅領域における仕込みを実行。さらに、海外家電事業を伸ばす部分に投資を行なう」と語った。
2017年度以降に増収増益狙うも、10兆円宣言は撤回
津賀社長が「意思を込めた減益」と語るのも、2016年が、将来に向けた投資を優先する1年と位置づけているからだ。それでも最低ラインの目標としている営業利益率5.0%の達成にはこだわっていく考えだ。
一方、創業100周年を迎える2018年度には、10兆円の売上高を目指していたが、これも8兆8000億円に下方修正した。パナソニックは、前任の大坪文雄社長時代の中期経営計画において、10兆円の売り上げ目標を掲げたことが、2回あったが、いずれも未達。津賀社長の宣言は、それに続いて3回目のものだ。「3度目の正直」という言葉が使われるほど、津賀一宏社長の10兆円宣言には注目が集まったが、それもわずか2年であっさりと撤回した。
だが、2018年度の売上高目標の10兆円の看板を降ろしたことも、それほど意には介していないようだ。
「2018年度に10兆円という目標を掲げたのは、すべての従業員が、一緒になって成長をするという考え方をベースにし、その成長戦略を活性化するために、明確な目標と時期を設定することが必要であったことから掲げた数値。だが、2015年度見通しの下方修正によって、発射台が下がった。成長戦略を継続しながらも、より具体的なターゲットに変更した」とする。
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