デバイスではなく人をターゲットとしたマーケティングへ
中でも、今年の目玉といえるのが、「Adobe Marketing Cloud Device Co-op」だろう。同じユーザーが複数のデバイスを利用する場合、デバイス間にリンクを確立することで別のデバイスからアクセスしても同一人物であることを認識することで、一貫性のあるコンテンツを提供できるというものだ。
「これまで業界は人ではなく、デバイスに向けてマーケティングしていた」とRencher氏、もしすべてのユーザーが2台を利用してアクセスしている場合は、”100万ユニークビジター”は”50万人”となる。この場合、マーケッターは各デバイスに対してエクスペリエンスを提供しているのであり、さまざまなデバイスからアクセスする人に一貫性のあるエクスペリエンスは提供できていない。これはマーケティングの課題であるパーソナライズの障害になっているという。
Device Co-opはそれに対する回答となる。Rencher氏によると、「51兆トランザクションがMarketing Cloudに流れており、AdobeはCo-opを作るユニークなポジションにある」という。
すでに「Audience Manager」で2社間のデータのやり取りが可能だったが、Device Co-opはこれをさらに進化するものとなる。たとえば、あるユーザーがCo-opに参加する旅行企業のアプリでホテルを検索し、その後、Webサイトでホテルを予約した場合、ホテルの広告ではなく、旅行に関連したチケットなどのサービスやレストランの広告を表示するという例が考えられるという。このような人の認識はこれまで、FacebookやGoogleなどのエコシステムを構成する企業のみが可能だったことだが、Co-opに参加すればGoogleらと同じようにユーザーの追跡が可能となる。「デバイスをベースとしたマーケティングから人ベースのマーケティングへ」とCo-opへの参加を呼びかけた。
なお、Co-opではデータはユーザーの承認を得て匿名で収集し、オプトアウトも可能。個人情報については、名前、電子メール、訪問データなどが参加企業間で共有されることはないとのことだ。
Device Co-opはまずはプライベートベータとして展開し、この1年でロールアウトする予定だ。
Adobeはこのほか、エコシステムでも2つの発表を行った。1つ目は開発者向けポータル「Adobe.io」で、これまでばらばらだったAdobeのCreative/Document/Makeringの3つのクラウドのAPI、SDKにアクセスできる。2つ目は、サードパーティとの統合のための「Adobe Exchange」プログラムだ。
これらはプラットフォーム事業に向けたものとなり、「クラウドプラットフォームとエコシステムへの投資は、Adobeの変革を示すもの」とRencher氏は説明した。「プラットフォームレベルのイノベーションを行う。これにより、顧客のMarketing Cloudへの投資を最大化できる」とした。
基調講演ではこのほか、エクスペリエンスの例としてリアル店舗の例を見せた。バイクのヘルメットを探す消費者が、検索によりアウトドア用品店のREIの商品を発見するところからスタートし、REIのアプリのインストール、最寄りのショップのプッシュ通知、店内に入ってからのモバイルアプリと物理世界との連動などを見せた。ショップに入るとアプリが、RFIDタグとBluetoothを装着したスマートバッグを試すように促す。スマートバッグとスマートフォンとのペアリングを行うことで、消費者がスマートバッグに商品を入れるとアプリ側のショッピングカートにその情報が表示される。そのまま店を出ると、アプリ側で課金が完了されるという流れだ。
このほか動画・TV側でも強化し、さまざまなデバイスでの視聴データでComScoreとの提携を発表した。提携の下、Adobe Marketing CloudとComScoreの視聴情報を連携できるようになり、顧客は精度の高い洞察を得らえるようになるという。