悩んだのは「紙ねんど」と「ブロック」の使い分け
ハンコヤドットコムが挑んだ起死回生のkintone導入
2015年06月29日 07時00分更新
「紙ねんど」と「ブロック」はどのように使い分けるのか?
大田氏はプロジェクトを手がけてきた経験を元に、講演のテーマにもなっている「紙ねんど」と「ブロック」という開発の在り方について説明を進める。
大田さんの語る「紙ねんど」とは、ゼロからプログラミングを行ない、すべてのシステムを手作りする「フルスクラッチ開発」を指す。フルスクラッチの場合、すべてイチから作れるため、何でもでき、制約条件もない。既存のノウハウやスキルも活かせるというメリットがある。
一方で、フルスクラッチにはデメリットも存在する。リリースや修正に時間がかかるほか、エンジニアの開発コストもかさむ。また、「フルスクラッチなんだからなんでもできるんでしょという社内の空気がある。でも、実際にはすべての要望に応えるのはとても大変」といった弱点もある。
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フルスクラッチの問題点
こうしたフルスクラッチの課題を打破すべく、今回は紙ねんどに加え、kintoneという出来合いのブロックを加えた。具体的には、kintoneでは基本フォームの活用、JavaScriptによる画面カスタマイズを行なったほか、データ連携のようにkintoneだけで難しいものはDataSpider(アプレッソ)のような外部のアプリを使った。こうしたブロックの活用を進めたほか、DataSpiderとのAPI連携、HTMLでのカスタマイズビュー、一部フルスクラッチ開発も実施。プロジェクトが円滑に進められた。「重要なのは、既存の秀逸な部品を組み合わせる部分、自分たちで作る部分のバランスをどうとるか」と大田氏は語る。実際、同社は次期バージョンの開発に向け、ブロックの割合を増やしている最中だという。
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紙ねんど部分の作業
ブロックとなるkintoneを最大限活用し、アプリストアで済めば一番速い。それが難しければ作り込めばよいし、どうしても手に余ればおそれず外部のパートナーにおねがいするとよいというのが大田氏の持論。「いきなり外部のパートナーに出すと、エンジニアリソースを確保できない場合もある。そんなときでも短期間でも外部に発注できるクラウドソーシングという仕組みがある」とのことで、枠にはまらずにさまざまな可能性を模索することが重要だという。
まずは「やってみなはれ」でユーザー部門がアプリ作成
現在、同社では開発プラットフォームのみではなく、社内の情報インフラとしてユーザー部門がkintoneをフル活用している。社内で作ったアプリは半年間で100を超え、しかもユーザー部門が作ったモノがほとんどだという。用途は、外部パートナーや海外とのやりとりやマーケティング施策の管理など幅広く、大田氏は「1つ1つの仕事のクオリティが上がった」と評価する。もちろん、全社で利用するアプリもあるが、「チームや部門が全員で使うモノ」「Excelよりも便利なモノ」「ずっと保管すべき情報を扱うモノ」に関しては、部門ごとでのkintoneアプリ作成で担っている。
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部門ごとにアプリを作る目安
アプリ作成に関しては、完璧を目指さず、「とにかくやってみなはれ(サントリー創業者 鳥井信治郎氏)の精神で、まずスタート。その後、ブラッシュアップ(作り替え)を前提として、「安全第一」で設計するのが重要だという。この「安全第一」の意味するところは、作り替えの際に利用中のアプリからデータが移行できるかどうかをきちんと考えること。たとえば、kintoneではテーブル行や添付ファイルなどの移行が難しく、再度データの登録し直しになるので、注意が必要だという。大田氏は「ファイルもkintoneに直接登録するのではなく、外部のオンラインストレージに登録しておいて、URLだけkintoneに貼っておけば、作り替えの時でも困らない」といった工夫を披露した。
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ブラッシュアップ前提で「安全第一」の作業
また、部内展開においては、ユーザー部門にkintone管理者を設置。IT部門から管理をある程度外し、部内の要望を聞いたkintone管理者がアプリを作ることで、ユーザーの自由度を高めた。さらに別途で外部のパートナーのサポートサービスを活用し、kintoneに関わる疑問や問い合わせを受けられる体制を作った。「自由度を保ちながら、カオス状態にならない状態はキープできた」(大田氏)という。
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部門ごとの管理者を設置し、アプリを作成
現在、同社は商品のマスターDBのkintone化を進めており、将来的には、コマースサイト、バックヤード、基幹システムまですべてkintone化する計画となっており、。「当初は開発プラットフォームとして導入したが、自然発生的に社内の情報インフラとして活用されるようになった。特に交通費や残業など申請系はkintoneと相性がよいので、導入を進めていきたい」と大田氏は今後の計画についてこう語った。
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