年次カンファレンス「IIJ Technical WEEK 2014」セッションレポート
IIJが「10G×10」よりも「100G×1」を選んだ理由
2014年12月04日 06時00分更新
IIJがバックボーンに「10G×10」よりも「100G×1」を選ぶ理由
27日の「IIJ 100G バックボーンネットワーク」と題するセッションでは、IIJ ネットワーク本部 ネットワークサービス部 ネットワーク 技術2課 課長代行の津辻文亮氏が、同社が2014年10月から年末にかけて配備を進めている100Gbps回線導入の背景を語った。
IIJは現在、インターネットトラフィックの増大に対応すべく、東名阪のインターネットバックボーン増強に取り組んでいる。同時に、プライベートトラフィックも増加する一方であるため、そのトラフィックをさばくクラウド向けバックボーンの増強にも取り組み、両者の統合を図っている。加えて、東日本大震災の教訓を踏まえ、広域災害が発生しても影響を最小限に留められるようバックボーントポロジーの見直しも進めている。
すでに多数の10Gbps広域回線を活用している同社だが、「10Gを複数本並べると利用効率が悪い。リンクアグリゲーションを利用したとしても、フローサイズやハッシュによってメンバーリンクごとに(負荷の)偏りが発生してしまう」(津辻氏)点が課題だった。加えて、疎通確認ひとつとっても、各リンクごとに作業を行わねばならず、運用コストが高く付く。キャリア回線を用いた場合は、どうしても故障タイミングがまちまちになるうえ、障害ポイントも多い。さらに、ラインカードの収容設計に気を配る必要があるうえ、構成も複雑になるなど、運用負荷が大きな課題だった。
「トータルで考えると、100Gを入れるメリットはある。10Gではどうしてもオーバープロビジョニングで設計せざるを得ず、10G回線を組み合わせて100Gを実現しようとすると、実際には(10本ではなく)14~15本必要になる。回線コストに加え、100Gが1本というシンプルな構成に移行することで運用が楽になるという期待もある」(津辻氏)
IIJではこの増強に合わせて、バックボーンネットワークトポロジーの変更にも取り組んだ。「東日本大震災の教訓を踏まえ、社会を支えるインフラとして、いろいろな災害を想定してネットワークを強固にしておく必要があるだろうと考え、100G導入に合わせて実施した」(津辻氏)という。
もちろん、機器やケーブルルートの冗長化といった取り組みはこれまでも行ってきたが、それまでは東京と大阪にCore POP(Point of Presence)を置き、東日本のPOPは東京に、西日本のPOPは大阪に接続してきた。だが、もしも東京に広域エリア災害が起こると東日本のPOP全体が、また大阪で広域エリア災害が起こると同様に西日本のPOP全体が影響を受け、通信不能に陥ってしまう。
そこでトポロジーを見直し、名古屋を新たにCore POPに昇格させ、地方のPOPは2つ以上の別エリアのCore POPに接続する形とした。その際、東日本のPOPが東京以外のCore POPに接続する際は東京非経由で、西日本のPOPが大阪以外のCore POPに接続する際は大阪非経由とするという念の入れようで、「1~2年がかりでキャリアと相談しながら構成した」(津辻氏)。この災害対策は東日本では完了しており、西日本でも2015年に完成する見込みという。
100Gバックボーン導入には、もう1つ、インターネットバックボーンとは別に展開しているクラウド向けバックボーンとの統合による、より柔軟なネットワーク設計を実現するという狙いもあった。
同社は2011年から、クラウドサービス向けにMPLS/VPWSによる仮想回線基盤ネットワークを展開してきた。これによって複数の閉域ネットワークの余剰帯域を共有し、必要なときに必要な帯域の仮想回線を切り出せる仕組みを作ってきた。キャリアとの調整などが不要なため、必要なときに迅速に仮想回線を提供できること、トラフィックエンジニアリングにより遅延などを考慮したパス設計が可能なことなどがメリットだ。
津辻氏によると「クラウド向けバックボーンを作り始めた当初からインターネットバックボーンとの統合は視野に入れていた」。今後は、VPWSによる100Gのコアバックボーン上で、ニーズに応じて1Gや10Gといったインターフェイスを柔軟に切り出し、提供できるようにしていくイメージを描いているという。