クラウドへの道を開いたNetApp Insight 2014 第1回
ハイブリッドクラウドのデータ管理をユーザーの手に
AWSで動くCloud ONTAP投入!進化するネットアップのクラウド戦略
2014年10月28日 09時00分更新
10月27日、米ネットアップはラスベガスにおいて年次イベント「Insight 2014」を開催した。プレスイベントではストレージOSの最新版である「clustered Data ONTAP 8.3」のほか、ハイブリッドクラウド向けの「Cloud ONTAP」が披露された。
ユーザー主導のデータ管理と運用をクラウドでも
この数年、ネットアップはハイブリッドクラウドに注力しており、ストレージOSの「clustered Data ONTAP」を中心にさまざまな拡張を続けてきた。オンプレミスとクラウドを統合し、ユーザーに統合した管理性を提供するのが大きな目的だ。今回のInsight 2014では、従来コンセプトにとどまっていたハイブリッドクラウドのビジョンに向け、具体的な製品や機能として提供してきた。
ストレージベンダーのネットアップにとっては、データの運用性や可搬性こそがハイブリッドクラウドの鍵になるようだ。メディア向けイベントにおいて登壇したジョージ・クリアン氏は、データやクラウドはあくまで顧客のものであると力説。ネットアップが実現するハイブリッドクラウドでは、資金の運用性が高い投資信託のように、ユーザーが自身がデータのコントロールと運用性を得られるとそのメリットを強調した。
これを実現すべくネットアップが投入したのが「NetApp Data Fabric」というコンセプトになる。これまで断絶したオンプレミスの「プライベートクラウド」、NetAppストレージを基盤とした「クラウドサービスプロバイダー」、そしてAmazon Web Services(AWS)やWindows Azure、IBM SoftLayerなどの「ハイパースケールクラウドプロバイダー」をこのNetApp Data Fabricによって統合。ポリシーに従ってデータを移動させたり、複数のクラウドをまたいでデータを統合的に管理できるのが大きなメリットになっている。
大幅な性能向上とクラウドへの拡張加えたcDOT 8.3
こうしたハイブリッドクラウドを支えるのが、同社の屋台骨ともいえるストレージOSの最新版「clustered Data ONTAP 8.3」だ。前身となるData ONTAPでは、おもにストレージの仮想化を進めてきたが、Data ONTAP 8でストレージシステム自体の仮想化を実現。クラスター構成によるノンストップオペレーションを実現したclustered Data ONTAPとして生まれ変わっている。
clustered Data ONTAP 8.3では性能や機能面での底上げに加え、クラウドとの連携を一層強化するに至っている。最新版の拡張や新機能については、米ネットアップ Data ONTAP/管理製品グループ 戦略/プロダクトマネジメント担当 バイスプレジデント ジョン・フレデリクセン氏が説明を行なった。
新バージョン8.3では、従来に比べ最大70%という大幅な性能向上を実現した。これはフラッシュ技術の投入やファイルシステムのWAFLの改良によるもの。フレデリクソン氏は、「フラッシュの設定により最大36万IOPS、1.3msec以下の低レイテンシーを実現した。VDIでデスクトップを立ち上げる際にもストレスを感じることはない」とアピールした。容量面でも、単一クラスターあたりの最大100PB、フラッシュのみでも最大1.7PBまで拡張。こうしたキャパシティの向上により、VDIやビジネスアプリケーションなど異なるワークロードをより多くホストすることが可能になっている。
また、災害対策向けの「NetApp MetroCluster」にも対応した。NetApp Metro Clusterは最大で200km離れたクラスター間で無停止での復旧を可能にする機能で、従来Data ONTAPにのみ対応していたが、今回はClustered Data ONTAPでも利用可能になった。効率性も向上しており、オールフラッシュの構成でGB単価を15%を引き下げたほか、FAS2000/2500の場合で利用可能な容量を70%向上させたという。
さらにNetAppストレージとパブリッククラウドを連携させる「NetApp Private Storage for Cloud」では新たにIBMのSoftLayerをサポート。オンプレミスとコロケーション施設にあるNetAppストレージ間でシームレスにデータを移行できる。今回はエクイニクスの「Equinix Cloud Exchange」を用いて検証を行なっており、AWSやMicrosoft Azure、IBM SoftLayerなどを切り替えて接続することが可能になったという。
パブリッククラウドにまで拡がるONTAP
もう1つの目玉は、パブリッククラウド上で動作する「Cloud ONTAP」の発表だ。ネットアップのアレイのほか、他社製品、コモディティアレイにまで幅広く対応するclustered Data ONTAPだが、いよいよパブリッククラウド上でそのリッチな機能を提供する。第1弾では、AWSをサポートしており、Web上からclustered Data ONTAP 8.3のインスタンスをデプロイし、テストや開発に用いることが可能になる。料金面でも使った分だけを支払う従量課金制が導入されるという。
さらに管理ツールの「OnCommand Cloud Manager」では、こうしたパブリッククラウド上でのCloud ONTAPのインスタンスやプライベートクラウドのNetApp Private Storage for Cloudまでを一元的に管理できる。GUI環境ではハイブリッドクラウドを可視化できるほか、異なる場所でのデータ移動の複雑性を軽減するという。
なお、プレスイベントではWAN高速化装置を手がけるリバーベッドのバックアップアプライアンス「SteelStore」の製品ラインをネットアップが買収したことも披露された。
ASCII.jpでは引き続きInsight 2014の模様を詳細にお伝えする。
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