生産規模の縮小がコストにどう跳ね返るかが不安要素
気になるのは、主要部材の調達においてコスト増が避けられない点だ。
規模の経済が大きく影響するPC事業は、調達量が多いほど1台あたりのコスト削減が可能になる。
標準部品については、「ODMの調達力を生かす」(関取社長)として、ODMが持つ調達力を背景にコスト削減を図る考えだが、個別メーカーとしての契約が前提となるマイクロソフトから調達するOSや、インテルから調達するCPUは、規模が16分の1となるだけに、これまでと比べてもコスト増へとつながるのは明らかだ。業界関係者の間では、最終価格で約2万円の増加になると試算する声もある。
このコスト増を吸収する小回りの利いた経営体質の確立とともに、外に向けては、コストを感じさせない魅力のある製品づくりが求められる。
新会社のキャッフレーズは、「自由だ。変えよう。」である。
そのキャッチフレーズを使ったメッセージのなかで、「あらゆるものから自由になった今こそ、思い切った決断ができる。VAIOの未来に必要なものを見極めること。そこにすべての力を集中し、PCにはびこる固定概念を変える」とする。
VAIO株式会社が置かれた立場は、PCメーカーとしての経営体質という点では、決して恵まれたものではない。しかし、VAIOが培ってきたDNAは確実に継承しているといえそうだ。むしろ、VAIOの事業がスタートした当時に戻った様相すら感じられる。その当時も、コンシューマの領域にフォーカスし、AVに特化したPCという他社にはないコンセプトで製品を登場させ、市場を席巻してみせた。
今度のVAIOはどうなるのか。
その点でも、これから約半年後に投入されるであろう、VAIOの新製品が楽しみである。
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