いい時にマネジメントを変える
今回の新たな経営体制では、取締役社長兼最高執行責任者(COO)には川原均氏が昇格。この2人で日本法人を切り盛りすることになる。
両者とも日本IBMの出身。川原氏は日本IBMへの入社を決める際、1年先輩で日本IBMに入社していた小出氏に相談をしにいったという間柄。川原氏の学生時代からつながりがある、強い絆を持ったコンビが同社の経営を担うことになる。
中期的な目標は、1000億円の売上高、2000人の社員規模を持つ企業への成長だ。達成時期は明確にはしていない。同社では、現時点の売上高は公表していないためその目標がどれぐらいの規模なのかは推測しにくいが、社員数が600人ということを考えると、かなりハードルの高い目標であることがわかる。
このほど、取締役相談役に退いた前任の宇陀栄次氏は、「今回のトップ人事は、私が自らドライブしたもの。経営トップの交代は、業績悪化など、経営者として『落ち目』になって変わることが多いが(笑)、そういう状況ではない。いい時にマネジメントを変えることこそが重要」とし、「1000億円の売上高、2000人の社員数という目標は私が描いたもの。これを、自分よりも優秀な人を採用して、その体制によって実現してもらうのがいいと考えた。小出さんは、日本ヒューレット・パッカードで4500人の社員を率いてきた。川原さんは、日本IBMで専務取締役として、数1000億円のビジネスをやってきた。こうした体制により、セールスフォース・ドットコムのビジネスがもっと加速することになる」とする。
宇陀氏も、同じく日本IBM出身であり、小出氏と同期の日本IBM入社。「一緒に仕事をした経験はないが、自分の我を出さない性格は小出さんのすばらしい性格のひとつ」と評価する。
宇陀氏は、今後、特別プロジェクトを率い、特定の顧客を担当するという。「私の得意な一点突破のビジネスを担当することになる」と宇陀氏は笑う。
新たな日本流の経営手法を
新体制では、CEOの小出氏に報告ラインを集約。多くのことを日本で意思決定ができる仕組みになったという。
「市場の変化にあわせて意思決定が迅速化できる。グローバル企業のなかにおいて、いかに日本流といえるものを打ち出すことができるかへの挑戦」と小出氏は語る。
川原氏も、「日本のマーケットにあったディシジョンを、日本のチームがクイックに判断し、グローバルチームにサポートしてもらうという仕組みの構築が必要。日本の意見をグローバルの経営のなかに反映していくことも大切だ」とし、すでに今年1月以降、日本で10件以上の戦略案件を決定し、ソフト会社に投資支援や新たなパートナーモデルを創出したこと、プライシングを決定する役割を持つプライサーを日本のなかに設置したことも明らかにする。
新たな経営チームは、グローバル企業における新たな日本法人の経営手法の創出にも乗り出すことになりそうだ。
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