英B&Wのエントリー向けスピーカー「600シリーズ」がリニューアル。上位機種で培った技術を盛り込み、技術的にも音質的にも大きな進化を遂げた。約20年の歴史を持つ600シリーズは1995年に初代機が登場してから今回が5世代目。2007年に登場した現行モデル機のリニューアルとなる。
新600シリーズには、従来同様、ブックシェルフタイプ、フロアスタンディングタイプ、センタースピーカーなどのバリエーションがある。
製品ラインアップ | |||
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製品名 | 形状 | 形式 | 税抜価格 |
683S2 | フロア型 | 3ウェイ4スピーカー | ペア28万円 |
684S2 | フロア型 | 2ウェイ3スピーカー | ペア18万4000円 |
685S2 | ブックシェルフ型 | 2ウェイ2スピーカー | ペア11万4000円 |
686S2 | ブックシェルフ型 | 2ウェイ2スピーカー | ペア9万円 |
HTM61S2 | センタースピーカー | 3ウェイ4スピーカー | 12万2000円 |
HTM62S2 | センタースピーカー | 2ウェイ3スピーカー | 7万1000円 |
STAV24S2 | スタンド | ── | ペア2万6000円 |
数字が小さいほど上位という位置付けになる。それぞれ6.5インチのバスドライバーを持つ上位機と5インチのミッド/バスドライバーを持つタイプの2つがある。さらにブラック・アッシュとホワイトのカラーバリエーションが選べる。型番は680番台となるが、従来機と重複するケースもあるため、末尾に「S2」を加えて新旧を区別する。本体は全体的にスリム化。それに伴い専用スタンドは、686S2と685S2に対応したトッププレートを用いた新型番となる。
いずれも新開発のツイーターを採用。CM10と同様に振動板(アルミ製ドーム)に中央部分をくりぬいた別のドームを重ね合わせることで、周辺部分を補強する仕組みにしている(デュアルレイヤー・トゥイーター)。薄さと軽さを維持しつつ、ドームを高剛性化し、高域の周波数特性を改善できる点がウリ。B&Wの説明では、高域の一次共振が従来の30kHzから38kHzにまで上がり、可聴域の特性が大きく改善されているという。
さらに、ツィーターユニットのダイヤフラムおよび磁気回路はフローティング構造として浮かせた。これによりツィーターとともに箱が振動してしまう問題を軽減でき、よりフォーカスの合った音像が実現できるという。CM10などではツィーターユニットをキャビネットに外付けする形をとってきたが、キャビネット内に収納する形でフローティング構造を実現したのは今回の600シリーズが初だという。
なお、ツィーター部分には金属製の保護カバーが装着されているが、これは店頭デモなどで不用意な破損を防ぐための仕組み。ツィーターを駆動する磁石で固定される仕組みになっているが、専用工具を使用することでユーザーの責任で取り外せる。この仕組みも開発者がこだわったポイントだという。
「686S2」「685S2」「684S2」などが持つバス/ミッドレンジ・ドライバーでは、円錐型のフェイズプラグではなく、40周年記念モデル「PM1」と同じ、エネルギー吸収型防振プラグを採用。発泡体ウレタン素材をケブラー製のコーンの中央部、ボイスコイルボビンにぴったりとはめ込まれている。
また「683S2」のダブルウーファーは、従来同様アルミ製だが、紙やケブラー素材を貼り付けて強度を確保していた従来機とは異なり、ツィーター同様リング状のアルミ素材を貼り合わせて周辺部分の強度を高めている。一方でセンターには少しへこんだキャップを付けている。
高域/低域の信号を分けるネットワークに関してはシンプルさがウリ。これはまず最初に最適な特性のドライバーユニットを作ることを考え、回路はよりシンプルで高品質なグレードのパーツを作るおちうB&Wの思想に沿ったものだという。マルチウェイでも正相接続にこだわっている点もその思想の現れ。ドライバーユニットを自社で設計し、求める特性を追求できるB&Wだからこそできるこだわりだという。
輸入元のD&Mでマランツブランドの音質担当マネージャーを務める澤田龍一氏によると、「計測結果や使用しているテクノロジーの面を見ると、CM10を除いたCMシリーズを超えた600シリーズ」であり、CMシリーズを脅かす存在であるという。
実際に最上位の683S2を試聴してみたが、まず驚いたのはスピーカーのはるか後方に広くかつ奥行き深く展開される、空間表現の秀逸さ・自然さだった。最初に男声と女声のデュオを聞いたが、ボーカルはきっちり中央に定位し、それぞれの立ち位置なども明確に感じ取れる。次に聞いたコンチェルトのオーケストラもバランスがいい。その後に聴いたのが805 マセラティ・エディションだったということもあり、低域の支えをもう少し、あるいは個々の音の輪郭の曖昧さなどを多少感じるといった面もあった。とはいえ、新しい600シリーズは、ソースに入っている個々の音を聞くというだけでなく、音の鳴っている空間丸ごとを体験して楽しむ気分に浸れるというのは非常に好印象。
こうした空間表現の巧みさはB&Wのスピーカーの特徴と言える。そのDNAは新しい600シリーズにも確実に継承されているし、技術の進歩によってその品質は非常に高い水準に到達したという感想だ。