ライセンス料は安価にして
将来ロイヤリティーで儲けるARM
もう1つ補足しておこう。前回「ライセンス料は不明」と書いたが、実はこれも数千万~数億円であろうとみなせる資料が、やはりARMからリリースされている。
元データは古いが、やはり投資家向けの2013年第1四半期の報告書(PDF)であるが、この6ページ目に、第1四半期における売上高が示されている。
大雑把には、ライセンスの売り上げが9490万ドル、ロイヤリティーが1億4000万ドル、その他が2900万ドルである。換算のために1ドル100円とすると、ライセンスが約95億円、ロイヤリティーが140億円、その他が29億円という計算だ。
巨額といえば巨額であるが、同じ第1四半期にインテルは120億6000万ドル(同じ換算レートで1兆2600億円)、AMDですら10億900万ドル(1090億円)を売り上げているから、これに比べると可愛いものだ、という言い方すらできる。
問題はそこではなく、このロイヤリティーの内訳である。同じ資料の12ページにはライセンスの動向が示されている。
この第3四半期に以下のライセンスをそれぞれ売り上げている。
- Cortex-Aのプロセッサーライセンス:9
- Mali GPUのコアライセンス:3
- Cortex-Rのプロセッサーライセンス:1
- Cortex-Mのプロセッサーライセンス:6
- Classic Processorのプロセッサーライセンス:1
- Subscriptionライセンス:1
- アーキテクチャライセンス:1
まずプロセッサーライセンスだ。Classic ProcessorというのはARM11とかARM7を指しているが、さすがにこれらはもう十分元を取ったと思うので、かなり安く(1千万円弱?)設定されていると思われる。
これに比べると、Cortex-AとCortex-Rシリーズは相対的に高価で、特に「Cortex-A15」と「Cortex-A50」はハイエンドということもあって、比較的高め(4~5億円程度)と考えられる。ただこの中には「Cortex-A7」なども含まれるので、こちらは当然安め(2億円前後?)と考えられる。
GPUもどのグレードかはわからないが、おおむねCortex-Aシリーズとそう大きく変わらないと仮定すると、全部で12ライセンスで平均4億で合計48億円。Cortex-R系はCortex-Aのハイエンドほどではないが、これも3~4億円程度と想像される。
Cortex-MシリーズはMCU向けということでずっと値段は下がる。こちらも、ハイエンドの「Cortex-M4」とローエンドの「Cortex-M0+」では全然価格が違うだろうが、平均で1億円として合計6億円だから、ここまでで累積57~58億円といったところだろう。
残るもののうち、Subscriptionというのは複数のプロセッサーコアをまとめて利用できる権利であり、当然個別にプロセッサーライセンスを購入するよりも割安に設定されている。おそらく20億円前後といったところだろう。残りがアーキテクチャーライセンスということで、やはり20億円前後だろう。
この価格設定は「1からCPUを開発するよりはるかに安い」というあたりをうまく狙っている。実際、この価格がもう一桁多かったら「ARMを使うのはやめる」というベンダーが出てきても不思議ではない。ARMとしてはライセンス料を安くしておいて、将来のロイヤリティーを増やすことが経営の安定につながると考えているからこそ、この価格でライセンスを提供していると考えられる。
ということで、ここまでが前回の補足となる。今回の本題はバスである。
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