日本の経営者は、顧客の声を聞くというが、デジタルと実世界の統合は不十分
ところで、この会見のなかで、イェッター社長は、IBMが全世界4200人以上のCxOを対象に実施した調査結果を披露。この調査結果をもとに、日本における課題を示してみせた。
それは、「顧客の影響力を受け入れ、経営に活かす」としたCxOは、全世界では54%となっているが、日本では76%と高い指標を示し、製品やサービス化において、顧客の声が重要であると認識しているトップが日本に多いことを評価しながらも、「デジタルと実世界とを統合した戦略を持っている」とした企業は、日本では24%に留まっているということだ。
つまり、顧客の声を聞くといっても、日本の企業の場合には、リアルの現場で直接声を集めるといったことが中心であり、海外企業のように、ソーシャルメディアなどを積極的に利用して、顧客の声を活用するといった動きに遅れていることが浮き彫りになったともいえる。
実は、IBMの調査とは別に、業界団体である一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)が、日米410社の非IT部門を対象に、IT投資に関する調査を実施したが、ここでは、日本の企業の40%以上がクラウドやビッグデータについては、「聞いたことがない/あまりよく知らない」と回答。また、ソーシャルメディアについても、認知度が低いなど、デジタル技術を顧客データを活用して収集したり、分析することに関心が低いことが浮き彫りになっている。
イェッター社長は、「ここに日本IBMのチャンスがある」とし、ビッグデータやクラウド、ソーシャルメディアの活用などの提案を加速する考えを示す。
それを受けて、米IBM グローバル・テクノロジー・サービス担当のエリック・クレメンティシニアバイスプレジデントは、「ソーシャル、モバイル、アナリティクス、クラウドの融合がITの新たな時代を創造することになる」と前置きし、「IBMのクラウドポートフォリオは、業界で最も広いものであり、SaaSだけでも100のアプリケーションがある。クラウドは企業活動のすべてを変革させ、企業にスピードというメリットを提供することになる」などとした。
アナリティクスがビジネスの価値を上げる
また、米IBM ミドルウェア・ソフトウェア担当のロバート・ルブランシニアバイスプレジデントは、「ビッグデータは、顧客の一人一人の状況を知ることができ、それを活用することで、ビジネスの最適化を行うことができる。IBMでは、その実現に向けて、優れたアナリティクスを提案できる。これによって、実際になにが起こったかということを理解することからはじまり、今後なにが起こるのか、どうすれば最大の価値が得られるのか、そして最善の判断はなにかというように、ビジネスの価値があがっていく」とした。
さらに、ルブランシニアバイスプレジデントは、「IBMは今年2月にIBM Mobile Firstを発表した。これはモバイルデバイスが起点となり、ソフトウェア、ソリューション、サービスを提供していくものだ。IBMはエンド・トゥ・エンドの形でソリューションを提供できる」とする。
IBMのこれらのソリューションを活用して、日本の企業が遅れているデジタルと実世界との統合戦略の立案につなげることができるかが、これから注目されよう。
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