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前田知洋の“タネも仕掛けもあるデザインハック” 第26回

iPhone 5s/5c戦略を知ったかぶる

2013年10月04日 09時00分更新

文● 前田知洋

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知ったかぶり その2
スマートフォンの成熟期に必要な機能に重点
iPhone 5sのカメラのF/2.2などが意味すること

 そんな戦略が最も現れているのが、搭載カメラの解像度とF値です。カメラの受光部を最新の部品に置換えておきながら、解像度を前モデルと同じ800万画素のまま、より光を集めるF/2.2の(かなり明るい)レンズ口径に変更。スマートフォンで撮影した写真や動画をSNSなどに投稿する現代のライフスタイルを考えれば、なぜメガピクセル化よりもユーザーが美しく感じる画像処理を優先したかが理解できるはず。

 先ほども紹介した、瞬時に複数毎の写真を撮影し、その中からベストショットをOSが選ぶ機能や、ホワイトとアンバー(琥珀色)を組み合わせてフラッシュを光らせ、1000通りの照明で夜の撮影でも自然な肌の色を再現するなど、スペックなどの数値では表現できない機能を充実させています。スマートフォンの成熟期らしい選択といえます。

知ったかぶり その3
新規格を見据えた端末
なぜ『おサイフケータイ』(NFC)が搭載されないか?

 iPhone 5s/5cに標準搭載されているiOS 7には、iBeaconと呼ばれる無線技術が採用されています。これは、Estmote社のBeaconという小型センサーを使ったBluetoothを利用した近距離通信技術。センサーはボタン電池で2年動作する省エネルギー性能です。顧客の入出店の管理から店舗内での位置情報も扱え、さらにはNFCと同じように決済(支払い)をすることができます。通信スピードや省エネルギー、通信距離(NFCは10cmに対して、Beaconは10m)で考慮すると、Beaconのほうが未来の可能性は大きそう。そんなこともNFCが採用されなかった理由の1つだと推測しています。


 日本で多く普及している「Felica」でも採用されているNFCが搭載されなかったのは残念ですが、世界戦略を常に考え、既存の規格と大胆に決別することで革新をもたらしてきたAppleらしい選択ともいえます。余談ですが、NFC決済に力を入れているのがGoogleというのも興味深いところです。

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