スピード感のある企業経営と自信の回復を
2つめは、スピード感を持った企業経営の実践だ。
高橋次期社長は、これまで自らが海外企業と直接交渉をしてきた経験をもとに、次のように語る。
「世界のリーディングカンパニーは、すごいスピードで経営をしている。クアルコムに初めて訪問した際にも、CEOやCOOが出てきて、直接、話をする機会を得た。決めるときはその日のうちに決めてしまう。取締役会が必要な場合には、世界中をテレビ会議でつないで決めてしまう。あるレベルの社員から地ならしをして、上に上げていくという仕事の仕方をしない。シャープもそうしたスピード感を持った経営をしなくてはならない」
また、今後のアライアンスについては、「クアルコムやサムスンとは、1対1のアライアンスだが、複数の違うファンクションを持った企業が、それぞれの強みを持ちよって、サプライチェーンのような形でのアライアンスし、新たな製品、サービスを作っていくという時代が始まっている」とし、「そこにシャープの技術の強みなどが発揮される」とする。
海外経験が長く、いくつのもの提携交渉の場についた高橋次期社長ならではの経験に基づく取り組みだといえよう。
3つめには、シャープ社員の自信回復だ。
「いま、シャープの社員に求めたいのは、自信を取り戻すこと。昨年度までは厳しい状況にあった。なんとか這い上がりたいという気持ちだけでは駄目で、もっと、自分に自信を持って歩いてほしい。そして、自分で判断して、自分でチャレンジし、上からの指示を待たないという風土に変えていかないと駄目である」と語る。
社員のモチベーションを高めることが、シャープの再生には不可欠である。
中期経営計画では、「事業ポートフォリオの再構築」「液晶事業の収益性改善」「ASEANを最重点地域とした海外事業の拡大」「全社コスト構造改革による固定費削減」「財務体質の改善」を課題に掲げる。そして、新規領域として「ヘルスケア・医療」「ロボティクス」「スマートホーム・モビリティ、オフィス」「食、水、空気の安心安全」「教育」の5つの分野に重点的に取り組む姿勢をみせる。
「私の信念は、3日間の仕事をしなくてはならないということ。どんなに辛くても、今日(今年度)と、明日(3~5年後)と、明後日(10年後)の仕事を、毎日しなくてはならない。これを順番にやっていては駄目である。私はこのやり方を変えない」と宣言。再生計画とともに、将来の成長戦略にも同時に手を打っていく姿勢を示した。
高橋次期社長は、「当社の原点である誠意と創意をはじめとする創業の精神以外は、すべてを変える覚悟で新生シャープを築き上げる」とし、「基本戦略は、勝てる市場、勝てる分野へ経営資源をシフトすること、自前主義からの脱却やアライアンスの積極活用。そして、ガバナンス体制の変革による実行力の強化の3点。これらの取り組みが、これまでのシャープとの決別には必要な要素となる」と語る。
社長就任会見では、高橋次期社長は自らの言葉を使いながら、強いリーダーシップを感じさせる発言が相次いだ。
2013年度の再生に向けた最後の仕上げを経て、2014年度以降の成長戦略をどう描こうとしているのか。新生シャープへの挑戦が始まる。
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