チップセットがHaswellの発売日に間に合わない!
Haswellが発売当初に品薄になりそうなのは、生産そのものに支障があるのではなく、チップセットが間に合わないからだ。Haswell世代ではパッケージがLGA 1150に切り替わることもあり、チップセットもLynx Pointこと「Intel 8シリーズ」に更新されることは連載182回で説明したが、このIntel 8シリーズは出荷前に製品変更通知が出ることになった(関連リンク)。
製品変更通知によれば、変更点はただ1つで「C1ステッピングからC2ステッピングにするとき、USBのSuperSpeedデバイスのエラー対処のために、メタルレイヤーを変更した」とある。では、この変更について解説しよう。
USB 3.0を利用しているときにシステムがS3のスリープモードに入ると、これにあわせてUSB 3.0コントローラーも配下のUSB 3.0デバイスをスリープモードに移行させる。ここまではいいのだが、システムが再びS0に復帰した場合、USB 3.0コントローラーは自身も復帰するとともに、配下のUSB 3.0デバイスをスリープから復帰させなければならない。
ところが、C1ステッピングのIntel 8シリーズチップセットの場合、USB 3.0コントローラーがスリープから復帰できず、復帰のためにはリセットが必要となる問題が以前から指摘されていた。
当初はファームウェアの更新で解決すると思われていたのだが、どうやらそれでは不可能で、回路そのものに手を入れないと解決できなかったようだ。これがメタルレイヤーを変更した意味である。
製品変更通知によれば、新しいC2ステッピングのES(エンジニアリングサンプル)の出荷は4月19日、検証完了の予定日が6月1日、最初の量産サンプルの出荷が6月15日、量産開始が6月31日となっている。
つまり7月以降は問題なくC2ステッピングのチップセットが入手できることになるが、逆に6月4日の発表から7月までの1ヵ月をどう凌ぐかが問題になってくる。そこで、OEMメーカーやマザーボードメーカーの解決策をいくつか挙げてみよう。
- ES品のC2ステッピングをそのまま搭載してマザーボードを出荷する
- C1ステッピングを搭載して、USB 3.0の機能を殺す
(この問題は、USB 2.0デバイスには影響しない) - C2ステッピングの量産が始まるまで製品を出さない
1番目は無茶だ、と思われるかもしれないが、過去にも秋葉原で購入したマザーボードにES品のチップセットが載っていた、なんてことはよくあったことであり、別に珍しくはない。ただESはあくまでも“サンプル”なので、それほど大量に出荷できるわけではない。なのでハイエンド向けの「数量少な目・価格高め」のマザーボードには可能だが、メインストリーム向けをこれでまかなうのは無理がある。
2番目はある意味確実ではあるのだが、USB 3.0の機能を補うために外付けでUSB 3.0コントローラーを別に搭載するなどしないと製品の価値として見劣りするため、コスト増になる。
したがって、3番目が一番真っ当なのだが、発売開始から1ヵ月間も対応製品を遅らせることの機会損失はかなり大きいわけで、そうそうOEMメーカーやマザーボードメーカーが受け入れるとは思えない。そこで、現実的なシナリオは以下のようになると考えられる。
- OEMメーカーやマザーボードメーカーは、ハイエンド製品にのみ、ES品のC2ステッピングを搭載して出荷。ただし数は限られる
- ハイエンドノートPCやオールインワンPCは、C1ステッピングに外付けUSB 3.0コントローラーを搭載して出荷
- メインストリーム向けは6月に発表だけしておき、出荷は7月のC2ステッピングの量産開始まで順延
この順延を受け入れてもらうための条件として、インテルも当初はハイエンド向けの「Core i7-4770K」と「Core i5-4670K」あたりのみをリテールに流し、その下に関しては7月のC2ステッピングの量産開始まで繰り延べすると思われる。
こうすることで、OEMやマザーボードメーカーの機会損失を最小限にするであろう。なにしろCPUがなければ客もマザーやPCを買わないため、特定のメーカーだけが儲かって他のメーカーが機会損失をかぶることがない。したがって、Haswellが本格的に流通するのは7月以降になるだろう。
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