今回のことば
「4K有機テレビは、音と画質にこだわるソニーのDNAが詰まった1つの集大成」
(ソニー・平井一夫社長)
トラブル要素さえもプラスに
2013年1月8日から米ラスベガスで開催した2013 International CESにおいて、ソニーは、56型の4K有機ELテレビの試作機を発表した。
発表した有機ELテレビは、新開発の酸化物半導体TFTと、ソニー独自のスーパートップエミッション方式により、4Kの高解像度を実現。この2つの技術を組み合わせることで、自発光デバイスの有機ELテレビならではの高コントラスト、高輝度、高速動画応答性能、広視野角といった特徴を最大限に生かすことができるという。
ソニーブースでは、ブラジルで撮影した4Kに最適化した映像コンテンツを放映。主要メーカーから有機ELディスプレイの展示が相次ぐなかでも、「ソニーの有機ELの映像がもっとも鮮やかだった」という声が、会場を訪れた業界関係者の間から出ていた。
実は、開催前日に行われたプレスカンファレンスでは、有機ELテレビの発表の際、登場したステージ上の試作機が、ブルースクリーンの表示になるアクシデント。カンファレンス後に平井社長は、「こうしたトラブルは、Ifではなく、When。いつかは起きるもの」とコメント。「ここをいかにジョークで超えるかがポイント」と、余裕のコメントを発していた。プレイステーションを担当していたときから、数多くの講演を英語でこなしてきた平井社長ならではのコメントだ。
実際、平井社長は、このとき、コマンドが表示されたブルースクリーンの画面を指さしながら、「4K有機ELテレビの美しさは、これでもわかるのでは」とジョークを交えて話していたのが印象的だ。さらに追い打ちをかけるように、「壇上で実際の映像を見られなかったので、そのあとに多くの報道関係者が有機ELテレビの前に殺到して、じっくりと見ていただけた。これはプラス要素」と、トラブル要素さえもプラスに捉えてみせた。
新しいソニーを象徴する製品
ソニーの平井社長は、この有機EL 4Kテレビを、「ソニーらしい製品のひとつ」と位置づけるが、さらに、今回のCESでは、2つのソニーらしい製品を展示したと語る。ひとつは、スマートフォンのXperia Zである。
「ソニーの資産を徹底的に注ぎ込んだスマートフォンはどんなものになるのかといったことを具現化した第1弾がXperia Z。新しいソニーを象徴する製品である」とする。 平井社長が新しいソニーを象徴する製品と語る背景には、Xperia Zが、平井社長が掲げるOne Sonyを実現する製品であるからだ。
Xperia Zでは、搭載しているカメラ機能の強化を図るために、デジカメのノウハウを活用している。だが、かつてのソニーエリクソンによる合弁会社の時期には、デジカメ事業部門から、「なぜソニーの技術を合弁会社に出さないといけないのか」という議論が出ており、One Sonyの実現には壁があったと明かす。
Xperia Zは、ジョイントベンチャー解消後の第1弾製品であり、「必要なのものがあればすべて出す」というデジカメ部門の協力体制のなかで作られた製品だという。
この連載の記事
-
第591回
ビジネス
シャープが堺のディスプレーパネル生産を停止、2期連続の赤字受け -
第590回
ビジネス
生成AIに3000億円投資の日立、成長機会なのか? -
第589回
ビジネス
三菱電機が標ぼうする「サステナビリティ経営」、トレードオフからトレードオンへ -
第588回
ビジネス
富士通の子会社でDX専門のコンサルティングをするRidgelinez -
第587回
ビジネス
メーカー自身が認定し、工場検査後に販売するパナソニックの中古家電 -
第586回
ビジネス
マイクロソフト、日本への4400億円のAI/データセンター投資の実際 -
第585回
ビジネス
日本市場の重要性を改めて認識する米国企業、変革期にある製造業がカギ -
第584回
ビジネス
NTT版の大規模言語モデル(LLM)、tsuzumiの商用化スタート、勝算は? -
第583回
ビジネス
エコ投資に取り組むエプソン、見方によっては10年で1兆円の投資も -
第582回
ビジネス
パナソニックコネクトの現在地点、柱に据えるBlue Yonder、ロボットとは? -
第581回
ビジネス
スタートして半年の日本NCRコマース、軸はAIとプラットフォームの2つ - この連載の一覧へ