連載178回と179回で、AMDが採用するARMの64bit CPUコア「Cortex-A53/A57」に触れた。今回はそのAMDのCPUロードマップについて解説する。いささか話が錯綜しているので、今回はデスクトップ向けCPUの話に絞っている。
TrinityとVisheraが出そろった
AMDデスクトップCPU
以前にAMDデスクトップCPUロードマップについて触れたのは、2012年5月の連載153回だった。まずはこの続きである。
メインストリーム向けとなる第2世代APU「Trinity」だが、ノート向けは5月に発表されて、7月くらいから一部のベンダーに出荷を開始していた。しかし、これはどちらかというと「出荷のアリバイ作り」のような数量だったようで、結局まともに数量が出るようになったのは、デスクトップ向けの解禁に近い時期にずれ込んだ。
そのデスクトップ向けTrinityの登場は、結局2012年10月まで遅れることになった。10月にはハイエンドの「A10-5800K」からローエンドの「A4-5300」まで6製品が発表されるとともに、TrinityコアからGPUを無効化した「Athlon X4/X2」も同時に発表され、都合9製品が投入された。
厳密に言うなら、「A10-5800B」「A8-5500B」「A6-5400B」「A4-5300B」という4製品もラインナップされている。これらはOEM向けに「AMD Business Class」というスペックに準拠した製品である。CPUそのものはまったく同じで、単に長期供給保障が付いている程度の違いだ。強いて言えば、ビジネス向けだからオーバークロック動作は不要ということで、倍率アンロック製品はない。
これらからやや遅れた10月23日には、今度は「Vishera」ベースの「AMD FX-8350」が発売された。その後もFX-4300が発売されたほか、FX-8320とFX-6300は11月にずれ込んだが、最終的には滞りなく発売された。これでAMDの手持ちの弾は、ほぼ出しつくした。
現時点でまだ出ていないものとしては、「AMD E」シリーズこと「Zacate 2.0」の新製品が残されている。以前の情報では、既存の「E2-1800」の上位製品として、「E2-2000」が用意されていると言われていた。これはCPUコアが1.75GHz、GPUが538MHzで動作するというもので、E2-1800よりやや高速といったものだが、これが延期、あるいはいったん白紙に戻ったようだ。
理由は不明だが、技術的な問題というよりはマーケティング的な問題のようなので、2013年にこれが復活する可能性もなくはない。これは後述する「Kabini」コア次第であろう。その代わりに、年内に「E1-1200」の上位として、「E1-1500」をリリースするもようだ。E1-1200がCPU 1.4GHz/GPU 500MHz駆動なのに対し、E1-1500では1.48GHz/530MHzと、こちらも微増である。もっとも製品の性格から言えば、デスクトップ向けといってもローエンド向けとなるし、自作のマーケットにはまず流れてこないであろう。
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