衝動買いにもさまざまな種類があるが、価格的にも気分的にもその症状が顕著に現れるのは、筆者の場合、秋葉原中央通りの西側、パーツ屋や携帯屋、ジャンク屋が並ぶ通りを1人でブラつく時だ。
JR秋葉原駅まで山手線で一気に行き、旧ラオックス「ザ・コン」(現AKIBAカルチャーズZONE)前から一方通行を逆進して、蔵前橋通りまで北に一直線で抜ける。そして最後に末広町交差点にある神田「達磨」のたい焼きを買ってタクシーで帰る。もちろんジグザクの寄り道も多いが、ここは通常絶対に外すことのない徘徊コースの定番道だ。
そんなお決まりコースにあるジャンク屋の一軒で、560円のカセットテープ型のデジタルオーディオプレーヤー(以降CDAP)を衝動買いした。ネット通販では2000円近辺で売られていたりもするが、「テクノロジー商品の旬」に敏感な秋葉原ではすでに投げ売りが始まっている。
CDAP本体には記憶メモリーを内蔵しておらず、別途SDメモリーカードを音楽データの記録域として利用する。PCに接続されたSDカードリーダー/ライターでMP3やWAVファイルを簡単にコピーできるので、PCユーザーなら極めて扱いやすい周辺機器だ。ミニUSBケーブルで充電して、再生用にミニステレオヘッドフォンジャックがある。構造的にSDメモリーカードを完全には収納できないので、出っ張りがやや気になるが560円なので我慢だ。
データの保存形式や再生の途中処理がデジタルオーディオの時代になっても、人間が音楽を聴くには、アナログデータの再生が最終型であることは何も変わっていない。極端に言えば、昨今流行のDAPの優劣は、内部のアナログ回路の優劣が商品価値や価格を決めているといっても過言ではない。
安価なDAPは貧弱なアナログ回路や、旧デザインの価格落ちした基板を搭載しているのが普通だろう。iPhoneやiPodのアナログ回路が貧弱かどうかは知る由もないが、昨今では外付けのDACや高級イヤフォンがそこそこ売れている理由も、アナログ回路改善への憧れや最終出口の品質改善への要望があるだろう。
そしてそのアナログデータの再生の最後を受け持ち、人間の耳に心地良い音を届けるのが、ヘッドフォンやイヤフォンの大事な役目だ。大昔から、難しい薀蓄を垂れずに速攻で再生音の品質を向上しようとすれば、スピーカーを替えてみることが、マニアには邪道とされつつも簡単でエコノミカルで、多くの人がトライして満足な結果を得ている即効的な手段だ。
所詮オーディオなんて、“他人の意見なんてどうでも良い自己満足ワールド”の最右翼世界にドップリ浸からないと、楽しくない世界なのだ。購入したばかりのCDAPを付属のイヤフォンで聴いてみたが、予想どおり驚くほどの音質の悪さだった。昔、受験勉強の間に聴いた深夜のAM放送の“ノスタルジックな昭和のラジオのような感覚”だった。
「戦略的衝動買い」とは?
そもそも「衝動買い」という行動に「戦略」があるとは思えないが、多くの場合、人は衝動買いの理由を後付けで探す必要性に迫られることも多い。
それは時に同居人に対する論理的な言い訳探しだったり、自分自身に対する説得工作であることもある。このコラムでは、筆者が思わず買ってしまったピンからキリまでの商品を読者の方々にご紹介し、読者の早まった行動を抑制したり、時には火に油を注ぐ結果になれば幸いである(連載目次はこちら)。
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