Squareだけでなく、PayPalなど複数の企業が参入
日本でもソフトバンクが事業化を目指す
このような事業者向けの決済ソリューションがアメリカでじわじわと使われだしているようだ。SquareのほかVeriFone、PayPal、個人事業社向けに会計ソフトなどを提供するIntuitなどがソリューションを提供しており、9月末にはGrouponも参入したところだ。ソリューションの数が増えれば、ユーザーの認知も進み、カテゴリーが立ち上がるだろう。
これらの形態では、事業者側がモバイル機器を決済端末として利用しているに過ぎず、支払うユーザーがスマホを使って支払うわけではない。見方によっては「モバイル決済」の定義から外れるのかもしれないが、Squareはユーザー(顧客)側にも仕掛けを用意した。ユーザーはアプリストアから「Square Wallet」をダウンロードし、支払い用のクレジットカードや顔写真などの情報を設定、後は対応ショップに行って名前を告げるだけで支払いが完了するというものだ。
アプリ側ではGPSを使ってユーザーに最寄りのSquare対応ショップを表示。ユーザー側が任意のショップに対し「ここで利用する」と設定しておけば、その情報がショップ側に行く。ショップは店先で顧客が名前を名乗ったら、支払い設定をしているリストを元に顔写真で確認をし、決済処理を進めるという仕組みである。Squareは2011年末にこのサービスを開始し、この春名称を「Card Case」から「Pay with Square」と変更した。スマートフォンはアプリの利用に用いられるが決済時は使用しない。
スターバックスとの提携で一歩リードのSquare
Twitterの創業者が参画しているのも注目される理由
Squareをはじめとした「モバイル決済」サービスはニッチで、これまで大手の小売店やチェーンでは利用されていなかった。だがSquareは8月にスターバックスとの提携を発表、全米7000の店舗でSquareを利用できるようになった。これで知名度はさらにあがり、利用も増えそうだ。Squareはスターバックスのすべてのクレジット決済を請けおうことになっており、事業規模も一気に拡大すると予想される。スターバックスによると、Squareの導入は11月にスタートするという。
このように、Squareは頭ひとつリードした感がある。Squareは決済処理の総額が年間80億ドルに達したことを発表、1年前には10億ドルだったというから、まさに右肩上がりで利用が増えていることがうかがえる。同社が注目されている理由の1つに、創業者がTwitterの創業者でもあるJack Dorsey氏であり、著名なベンチャーキャピタルからの支援を得ているという点がある。
Squareが次々と提携や拡大戦略を発表してスポットを浴び、Grouponもこの市場に参入するなか、NFCのGoogle Walletはそれほど動きがなく、複数携帯キャリアの合弁企業であるISISも開始が遅れている(関連記事)。さらには、業界が最も期待していたiPhone 5では結局NFCは搭載されず――モバイル決済としてのNFCはなかなか盛り上がらない。
Passbookも基本的には似た発想
とはいえNFCの将来性が消滅したわけではない
iOS 6でAppleが導入したPassbookはSquareのPay with Squareのコンセプトに近く、Pass生成ツールがいくつもで出てきているのを見るとPassの種類は今後どんどん増えそうな予感だ。
とはいっても、SquareもAppleもNFCを視野に入れているはずだ。SquareはGoogle Walletの設計を共同で手がけたRob von Behren氏を雇い入れたというし、AppleもPayPal Mobileやスターバックスの二次元バーコードなどを手がけたNFC/モバイル決済のベテランBenjamin Vigier氏を引き抜いている。
このように、アメリカの開発者たちは、(表面上は)NFCでなにができるのかというより、NFCなしでどこまでできるのかのアイデア勝負の方が盛り上がっているように見える。欧州でもイギリスのPowa、ドイツのPaylevenなど、Square型モバイル決済が出てきているという。
筆者紹介──末岡洋子
フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている
この連載の記事
-
第341回
スマホ
世界で広がる学校でスマホを禁止する動き スマホを使わない時間を子供が持つことに意味がある? -
第340回
スマホ
対米関係悪化後も米国のトップ大学や研究機関に支援を続けるファーウェイの巧みな戦略 -
第339回
スマホ
ビールのハイネケンが“退屈”な折りたたみケータイを提供 Z世代のレトロブームでケータイが人気になる!? -
第338回
スマホ
ファーウェイはクラウドとスマホが好調で大幅利益増と中国国内で復活の状況 -
第337回
スマホ
米司法省、アップルを独禁法違反の疑いで提訴 その中身を整理する -
第336回
スマホ
Nokiaブランドのスマホは今後も出される! バービーとのコラボケータイ、モジュール型などに拡大するHMD -
第335回
スマホ
ファーウェイスマホが中国で好調、次期HarmonyOSではAndroid互換がなくなる!? -
第334回
スマホ
Nokiaのスマホはどうなる!? HMD Globalが自社ブランドのスマホを展開か -
第333回
スマホ
アップルがApp Storeで外部決済サービスを利用可能に ただし手数料は27% -
第332回
スマホ
米国で特許侵害クロ判定で一時は米国で販売停止のApple Watch、修正は認められるか? -
第331回
スマホ
2023年は世界で5Gが主役になった年 世界の5G契約数は16億に - この連載の一覧へ