今週のGPU黒歴史は、Matroxの「Parhelia」である。連載138回で紹介した「Matrox m3D」とは異なり、こちらはMatroxから邪険にされたわけではなく、それどころか起死回生の切り札として華々しく登場した製品であったが、そのまま同社のコンシューマー向け製品ラインナップを終わらせてしまった張本人とも言える。Matroxの生い立ちの初めの方に関してはm3Dの際に説明しているので、まずはその続きから説明しよう。
Mystiqueのあとを継いだG200/G100シリーズ
1998年4月、Matroxは「G100」、翌5月には「G200」をそれぞれ発表する。主力製品はG200で、128bitエンジンを搭載し、3D機能を「Matrox Mystique」から大幅に拡充した製品である。ちなみにG200のグラフィックスコアは、内部には「WARP」と呼ばれるRISCエンジンを搭載しており、例えばTriangle Setup Engine(頂点計算エンジン)などは、このWARPコアが実施していたという。なんだかどこかで聞いたような構造であった。
一応擁護しておくと、グラフィックスコアに限らずこの当時は、内部のステートマシン制御などに独自のRISCコアを使うという傾向はごく一般的で、それで十分性能が出たから、一概にこの方法を責めるわけにもいかない。問題だったのは、さらに高性能な要求が出てくると、スムーズに性能を引き上げるのが難しかったことで、それは大抵次期製品で問題になった。
そんなわけでG200は高性能とはいえないものの、まずまずの性能が出たことは事実であった。G200はメモリーバスに「Dual Bus」と呼ばれる、独自の64bit×2の構成を使ったことでも有名である。ただし、64bit×2は128bitではない。AMDが「Turion X2」で導入した「Ungangedモード」と同じように、2つの64bitバスが独自に動作するというもので、ランダムアクセス時の性能が引き上げられるというのが、Matroxの主張であった。
この仕組みは商品構成上の柔軟性もあった。G200にはいくつかのパッケージがあるが、最大メモリー搭載量は16MBながら、オンボードに8MBのみ搭載し、あとは独自規格のSIMMをつかって8MB増設が可能という製品も出回った。この際、オンボードのメモリーは片方の64bitバスのみに接続されており、増設スロットはもうひとつの64bitバスにつながる形にすることで、著しい性能劣化を起こさずにメモリー搭載量を増やすことが可能だった。
このG200の内部を、半分の64bit幅のエンジンに削減したのがG100である。もっとも、G100もG200も外部メモリー幅は64bit×2だし、搭載されるWARPコアも同じものなので(動作周波数をやや下げた程度)、純粋にラスタライザーの性能が半分になったと考えればよい。
G100はエントリー向けの3Dグラフィックエンジンとして利用され、「Productiva G100」シリーズとして発売された。一方G200はメインストリーム向けとして、「Millennium G200」「Mystique G200」「Marvell G200」といったラインナップで少しずつ構成を変えながら、多数の商品がラインナップされている。
しかしG200の性能は、メモリーにSGRAMを搭載したハイエンドの「Millennium G200 SG」でさえも、3D描画性能はNVIDIAの「RIVA TNT」や、ATIの「Rage 128」には遠く及ばない。同じ1998年に登場した「Savage 3D」と競う程度であった。とはいえ2Dに関しては相変わらず高速で、そのため「Voodoo 2」と組み合わせて使うなんてケースが結構多かった。
またマルチディスプレー環境用に、複数のG100/G200を搭載した製品も投入される。「Millennium G200 Dual/Quad」とか「Productiva G100 Dual/Quad」がそれで、テレビチューナーを搭載したモデルまで用意された。テレビチューナー付きの方は、ATIの「All-in-Wonder」という強力な競合製品があったために売れ行きはさほどではなかったが、Dual/Quadの方は最大4画面出力を可能にするということで、業務向けなどでそれなりに人気を博した。
また当初G100/G200は350nm(0.35μm)プロセスで製造されていたが、後に250nm(0.25μm)プロセスに微細化したモデルも登場する。これは「Millennium G200A/G250」として発売され、G200Aは同じ動作周波数で省電力版として、G250は若干(90MHz→96MHz)動作周波数を引き上げた高速版として投入された。G200Aはともかく、G250AはOEM向けのみという扱いで、リテール市場に出回ることは皆無だった。
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