シャープは「IGZO」(酸化物半導体)ディスプレーの新技術に関する記者発表会を行なった。
新技術は、IGZOを構成するIn(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)に結晶化構造を持たせるというもの。この結晶化構造は半導体エネルギー研究所が2009年に発見したもので、シャープと半導体エネルギー研究所はこの結晶体を「CAAC」(C-Axis Aligned Crystal)と名付けている。
従来のIGZOはアモルファス(非晶質)であったが、CAACのIGZO結晶はある面から見ると六角形の構造となり、それを横から見ると層のようになっている。この状態だと緻密で欠落のない薄膜となり、量産においても効率性が高まる。
この新技術により、500ppi以上のさらなる高精細化が可能になるほか、製造プロセスが簡略化でき、さらに有機ELディスプレーなどへの応用も可能となるという。
現在、同社は三重県亀山市の亀山第2工場においてすでにIGZO液晶パネルの生産を開始しているが、2012年中にこのCAAC採用の新IGZOの生産に切り替える予定で、今年度内にも製品化したい考えだ。
会見に臨んだシャープ副社長執行役員 技術担当兼オンリーワン商品・デザイン本部長の水嶋繁光氏はIGZOパネルについて、特にモバイル機器でのアドバンテージが大きいことを強調した。
モバイル液晶に求められるものとして同氏は、高精細化と低消費電力、タッチパネルの高性能化を挙げ、「(今後は)精細度の高さがディスプレーの価値を決める」と断言。
さらに、低消費電力についてはモバイル機器の長時間駆動を実現し、バッテリーを小さくすることもできるため、「ガラスなどを薄くするよりもむしろより効率的に(軽く・薄い製品を)達成できる」と語った。
質疑応答では有機ELへの展開についての質問が相次いだが、水嶋氏は「少なくとも有機EL開発は他社に遅れることのないレベルまで来ている」とし、「モバイルディスプレーの選択肢としては否定しない」と語ったが、その一方で「投資対効果に課題がある」として具体的な製品化などには言及しなかった。