制度設計のための議論は残念ながら混乱している
残念ながら現状の議論はあまり整理されておらず、歪んだ形で進んでしまっているのではないかと思います。その一因として、共通番号制度は検討すべき分野が、複雑に絡み合っていることが挙げられます。税法や社会保障はもちろん、個人情報保護法、金融、ICT、社会システム、さらには海外の動向にいたるまでさまざまな議論があり、これらを個別に議論していては、話が前に進まないのです。私が本書を書こうと思った理由は、これら全てを勘案したうえで、問題点と包括的な解決策、そしてその根拠を世に問う必要性を強く感じたからです。
私が所属する野村総合研究所には、幸いなことにこうした各ジャンルのエキスパートが大勢います。自社の専門家集団と議論を重ねる中で気づいた点や、検討すべき新しい視点も本書には盛り込んでいます。
その意味では、共通番号制度について考察できたと思いますし、全体像をつかむことができる本に仕上がったと思っています。
解決策だけではなく、理由を示すことが重要
本書は、まず第1章で問題点や課題をあぶり出し、第2章、第3章ではID社会の動向や本質を考察。これらを受けて最後の第4章では解決策を示すという構成になっています。
もちろん読者には、全て読んでいただきたいのですが、共通番号制度を考えるには非常に多くの分野の知識が必要となるため、主に第2章と第3章では、専門的なところまで踏み込まざるを得なかった箇所もあります。そこで、まずは共通番号制度のアウトラインが知りたいという方は、第1章と第4章をお読みいただきたいと考えております。
とはいえ、第4章の解決策を提示するには、どうしてもその根拠を示す必要があります。第1章と第4章を読んでエッセンスをつかんだ後で、必要に応じて第2章と第3章をお読みいただけば、より深い理解へとつながるものと思います。
また、本書でこだわった工夫点として、各章・各節に論点をまとめたポイントを適宜掲載しています。これも、まずは共通番号制度のざっくりとした全体像をつかみたいという読者にはお役に立てるものと思います。
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完全解説 共通番号制度 マイナンバー法の真実、プライバシー保護は大丈夫か?八木晃二(著)アスキー・メディアワークス
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