Nokiaも本格復帰でますます激化するスマホ市場
戦略変更で昨年はブースがなかったNokia。その前まではHall 8にブースを構えていたが、カムバックとなった今年はHall 7をざっと半分貸し切り、Hall 8のAndroid勢と距離を置いた。なお、Hall 7の残り半分はApp Planetというアプリ開発向け展示スペース。エコシステムを重視するという同社の戦略通り、Nokiaスペースもアプリやサービスの展示が大部分を占めていた。
Nokiaは会期中、Windows Phoneではローエンドとなる「Lumia 610」と4100万画素カメラを搭載した「Nokia 808 Pure View」などを発表したが、関心が高かったのは後者だ。だが808 Pure ViewはSymbian機種で、スマートフォンでユーザーが使いたい“アプリ”の要素が劣る。808 Pure Viewのターゲットがわかりにくいが、思い切ってWindows Phoneを搭載しなかったのは、Nokiaが口でいうほどWindows Phoneにコミットしていないということなのだろうか(これに対するNokiaの回答は、このスペックのカメラを搭載するにあたって、慣れたSymbianを選んだ、というものだ。なお、Pure Viewは開発スタートが5、6年前にさかのぼる長期プロジェクトだ)。
そのWindows Phoneについて、チャンスはあるのかをテーマとしたパネルがあった。参加者はNokiaのCEO、Stephen Elop氏、HTCのCEO、Peter Chou氏ら。Elop氏はAndroidへの対抗心をむき出しにして、「ナンバー1フォーカスはAndroidとの競争」と述べた。Windows Mobile/Phone搭載機の歴史が長いHTCのChou氏は、「Windows Phoneのシェアは低いが、使った人の満足度は高い」と評価しつつも、OSとして強い立場になるかについては明確には肯定しなかった。なお、Windows Mobile/Phoneのベンダーシェアは第4四半期、これまでトップだったHTCに代わり、Nokiaがトップとなった。
さて、AndroidのGoogleは、Eric Schmidt会長が恒例の基調講演を行ない、Hall 8にAndroidスペースを設けた。Android端末は毎日85万台がアクティベーションされているという。アプリの数は45万とのこと。数字も驚くが、Schmidt氏のスピーチでも変化を感じた。
これまでのスピーチでは、Googleに脅威を抱くフロアの参加者を、ステージ上のSchmidt氏が一手に受けるという構図である種の緊張感が漂っていた。だが、今年Schmidt氏は業界を牽引する立場で、まだモバイル/ネットにアクセスできない人がいるというデジタルデバイド問題を取り上げた。そして、来場者に向かって力を合わせて問題を解決しようと呼びかけた。もちろん、「すべての人のポケットにAndroidを」がGoogleの狙いだ。1年前なら、正面からGoogleのビジネスモデルを批判するような質問が出されたQAセッションでも、「Googleは収益をパイプ(オペレータ)に還元しないのか?」という質問を出したのはたった一人。昨年のダムパイプ議論は(表面上は)終わり、(“ダム”かどうかは別として)パイプとして急増するトラフィックへの対応に追われているのが今年のオペレータの状況なのだろうか? なお、Schmidt氏はAndroidがそのうち70ドル地点に達すると、新たな市場にリーチして次の爆発が起こると予言。「人間を作らなければならない」というジョークを飛ばした。
OS戦争が終わっていないと考えるのは、Nokia(Microsoft)だけではない。会期中、FirefoxブラウザーのMozillaがWebベースの「Boot to Gecko」を披露、同OS搭載でスペインTelefonicaとの提携も発表した。年内にも搭載機が登場すると予想されている。
このほかにも、IntelとSamsungが主導する「Tizan」(「MeeGo」と「LiMo」のマージ)もベータ版が登場し、Huaweiがメンバーに加わったことを発表した。忘れてはならないのがBlackBerryのResearch In Motion。RIMはブースで、最新のタブレットOS「BlackBerry PlayBook 2.0」と、同OSの土台となるQNXを前面に押し出し、QNXベースとなる次期版「BlackBerry 10」に向けて準備を進めていることをアピールした。
まだまだ大きく動いているモバイル業界。1年後のバルセロナまでに、どのような変化が起こっているのか楽しみだ。
![](/img/blank.gif)
この連載の記事
-
第341回
スマホ
世界で広がる学校でスマホを禁止する動き スマホを使わない時間を子供が持つことに意味がある? -
第340回
スマホ
対米関係悪化後も米国のトップ大学や研究機関に支援を続けるファーウェイの巧みな戦略 -
第339回
スマホ
ビールのハイネケンが“退屈”な折りたたみケータイを提供 Z世代のレトロブームでケータイが人気になる!? -
第338回
スマホ
ファーウェイはクラウドとスマホが好調で大幅利益増と中国国内で復活の状況 -
第337回
スマホ
米司法省、アップルを独禁法違反の疑いで提訴 その中身を整理する -
第336回
スマホ
Nokiaブランドのスマホは今後も出される! バービーとのコラボケータイ、モジュール型などに拡大するHMD -
第335回
スマホ
ファーウェイスマホが中国で好調、次期HarmonyOSではAndroid互換がなくなる!? -
第334回
スマホ
Nokiaのスマホはどうなる!? HMD Globalが自社ブランドのスマホを展開か -
第333回
スマホ
アップルがApp Storeで外部決済サービスを利用可能に ただし手数料は27% -
第332回
スマホ
米国で特許侵害クロ判定で一時は米国で販売停止のApple Watch、修正は認められるか? -
第331回
スマホ
2023年は世界で5Gが主役になった年 世界の5G契約数は16億に - この連載の一覧へ