このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

末岡洋子の海外モバイルビジネス最新情勢 第47回

MWC 2012まとめ

Samsung、中国勢、カムバックのNokia、そしてOS戦争

2012年03月07日 12時00分更新

文● 末岡洋子

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

Nokiaも本格復帰でますます激化するスマホ市場

 戦略変更で昨年はブースがなかったNokia。その前まではHall 8にブースを構えていたが、カムバックとなった今年はHall 7をざっと半分貸し切り、Hall 8のAndroid勢と距離を置いた。なお、Hall 7の残り半分はApp Planetというアプリ開発向け展示スペース。エコシステムを重視するという同社の戦略通り、Nokiaスペースもアプリやサービスの展示が大部分を占めていた。

 Nokiaは会期中、Windows Phoneではローエンドとなる「Lumia 610」と4100万画素カメラを搭載した「Nokia 808 Pure View」などを発表したが、関心が高かったのは後者だ。だが808 Pure ViewはSymbian機種で、スマートフォンでユーザーが使いたい“アプリ”の要素が劣る。808 Pure Viewのターゲットがわかりにくいが、思い切ってWindows Phoneを搭載しなかったのは、Nokiaが口でいうほどWindows Phoneにコミットしていないということなのだろうか(これに対するNokiaの回答は、このスペックのカメラを搭載するにあたって、慣れたSymbianを選んだ、というものだ。なお、Pure Viewは開発スタートが5、6年前にさかのぼる長期プロジェクトだ)。

Windows Phoneをテーマにしたパネル。NokiaのElop氏がNokia 808 Pure ViewでHTCのChou氏の写真を撮っている。座っているのはFoursquareのCEO、Dennis Crowley氏

Nokiaのブース。地元なだけに、なかなかの賑わい

 そのWindows Phoneについて、チャンスはあるのかをテーマとしたパネルがあった。参加者はNokiaのCEO、Stephen Elop氏、HTCのCEO、Peter Chou氏ら。Elop氏はAndroidへの対抗心をむき出しにして、「ナンバー1フォーカスはAndroidとの競争」と述べた。Windows Mobile/Phone搭載機の歴史が長いHTCのChou氏は、「Windows Phoneのシェアは低いが、使った人の満足度は高い」と評価しつつも、OSとして強い立場になるかについては明確には肯定しなかった。なお、Windows Mobile/Phoneのベンダーシェアは第4四半期、これまでトップだったHTCに代わり、Nokiaがトップとなった。

 さて、AndroidのGoogleは、Eric Schmidt会長が恒例の基調講演を行ない、Hall 8にAndroidスペースを設けた。Android端末は毎日85万台がアクティベーションされているという。アプリの数は45万とのこと。数字も驚くが、Schmidt氏のスピーチでも変化を感じた。

Google会長のEric Schmidt氏

Android開発を統括するAndy Rubin氏(左)の姿も

 これまでのスピーチでは、Googleに脅威を抱くフロアの参加者を、ステージ上のSchmidt氏が一手に受けるという構図である種の緊張感が漂っていた。だが、今年Schmidt氏は業界を牽引する立場で、まだモバイル/ネットにアクセスできない人がいるというデジタルデバイド問題を取り上げた。そして、来場者に向かって力を合わせて問題を解決しようと呼びかけた。もちろん、「すべての人のポケットにAndroidを」がGoogleの狙いだ。1年前なら、正面からGoogleのビジネスモデルを批判するような質問が出されたQAセッションでも、「Googleは収益をパイプ(オペレータ)に還元しないのか?」という質問を出したのはたった一人。昨年のダムパイプ議論は(表面上は)終わり、(“ダム”かどうかは別として)パイプとして急増するトラフィックへの対応に追われているのが今年のオペレータの状況なのだろうか? なお、Schmidt氏はAndroidがそのうち70ドル地点に達すると、新たな市場にリーチして次の爆発が起こると予言。「人間を作らなければならない」というジョークを飛ばした。

Androidスタンド、UFOキャッチャー(?)に長蛇の列

 OS戦争が終わっていないと考えるのは、Nokia(Microsoft)だけではない。会期中、FirefoxブラウザーのMozillaがWebベースの「Boot to Gecko」を披露、同OS搭載でスペインTelefonicaとの提携も発表した。年内にも搭載機が登場すると予想されている。

Mozillaは初のMWCデビュー。Boot To Geckoをデモし、アプリマーケットも売り込む

 このほかにも、IntelとSamsungが主導する「Tizan」(「MeeGo」と「LiMo」のマージ)もベータ版が登場し、Huaweiがメンバーに加わったことを発表した。忘れてはならないのがBlackBerryのResearch In Motion。RIMはブースで、最新のタブレットOS「BlackBerry PlayBook 2.0」と、同OSの土台となるQNXを前面に押し出し、QNXベースとなる次期版「BlackBerry 10」に向けて準備を進めていることをアピールした。

HPの「webOS」も気になるが、ブースではwebOS関連のアクティビティはなかった

 まだまだ大きく動いているモバイル業界。1年後のバルセロナまでに、どのような変化が起こっているのか楽しみだ。


■関連サイト

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン