フィンランドのNokiaは6月14日(現地時間)に、主要事業を率いる幹部総入れ替えと戦略を発表した。主に収益性の強化を図るもので1万人規模の人員削減も伴う。同時に、高級携帯電話ブランドである「Vertu」の売却、画像ソフト開発のScaladoからの知的所有権の取得なども発表した。だが、スマートフォンやフィーチャーフォンの戦略は既存の方向性の延長といえ、新しい要素は少ない。
新幹部として、執行担当バイスプレジデントにJuha Putkiranta氏、最高マーケティング責任者(CMO)にTuula Rytila氏、モバイルフォン担当上級バイスプレジデントにTimo Toikkanen氏、セールス・マーケティング担当上級バイスプレジデントにChris Weber氏が就任。
同時にこれまでCMOを務めたJerri DeVard氏、モバイルフォン担当上級バイスプレジデントのMary McDowell氏、マーティング担当のNiklas Savander氏らが退くことになった。DeVard氏をのぞく2人はNokiaのベテラン社員だ。
収益体質を強化するため、オペレーションコストに大きなメスを入れる。影響を受けるのはデバイス&サービス分野で、フィンランドのサロに持つ工場を閉じるほか、ドイツとカナダの研究施設も閉鎖する。これらにより2013年までに約1万人の社員を削減する見通しだ。コア以外の資産に関連するコストを削減し、合計で約10億ユーロ相当のコスト削減を目指す。同時に、主要市場の優先化を通じて投資をフォーカスする。
Nokiaは同時に、Vertuを北欧ベースの投資ファンドであるEQT VIに売却する計画を発表した。Vertuはイギリスを拠点としており、約1000人の社員を抱えている。取引は第2四半期に完了を見込む。金額など取引の詳細は公開されていないが、Bloombergなどの報道では2億ユーロ程度と見積もっている。
危機がつづくNokia
Windows Phone戦略は軌道に乗るか?
Nokiaはスマートフォン時代で大きく出遅れており、立て直しを目的に2009年9月にMicrosoftよりStephen Elop氏をCEOに迎え入れた。Elop氏はその後、2010年2月にMicrosoftと戦略的提携を結びスマートフォンで「Windows Phone」を採用することを発表、現在LumiaブランドでWindows Phoneラインを展開している。なお、Elop氏就任以来、Nokiaは約3万人規模の人員削減を行ってきた。Nokiaの第1四半期末時点の社員数は5万3000人になっている。
戦略面では今回、スマートフォンではWindows Phoneと位置情報サービス(Location Based Service)を差別化とする戦略をさらに強化するとした。端末側ではLumiaラインの価格帯を拡大、今後ミッドレンジやエントリーを強化すると思われる。LBSではこれまで、NAVTEQをベースにナビゲーションなどの拡大を続けており、先には拡張現実(AR)を利用したビジュアル検索技術「Nokia City Lens」を発表している。これらに加え、素材や新技術でも差別化を試みるという。
また、Nokiaはモバイル向け画像イメージング技術のScaladoから人材と知的所有権を取得する計画も発表した。Scaladoは静止画の編集やキャプチャー技術を開発するソフトウェア企業で、「Scalado PhotoBeamer」などのモバイルアプリを提供している。同社の資産を取得することで、イメージング分野を強化する狙い。なお、Nokiaは2月、41メガピクセルカメラを搭載した「Nokia 808 Pureview」を発表。Pureviewブランドを今後Windows PhoneベースのLumia機種に拡大するとしている。
フィーチャーフォンでは、「Series40」「Series30」の2ラインを強化し、中国ベンダーに押され気味の新興国市場でのシェア挽回を試みる。
Nokiaは2012年第1四半期、8年間維持してきた携帯電話での世界シェアNo.1の座をSamsungに譲っている。同期、Lumiaの販売台数は約200万台となっている。