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DC電源採用で非効率な変換ロス、LEDのちらつきまで一掃

60W給電でPCもLED照明もOK!オフィスを変えるCisco UPOE

2011年10月19日 06時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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10月18日、シスコシステムズは60Wの給電を可能にする「Cisco Universal Power over Ethernet(Cisco UPOE)」を発表した。従来のIP電話機や無線LAN APに加え、ディスプレイやPC、LED電気まで給電できるという。

最大60Wの給電で対応デバイスがぐっと拡大

 発表会では、ボーダレスネットワーク事業統括 専務執行役員の木下剛氏が、企業のグリーン化の課題やシスコのPoEへの取り組みを紹介した。同社では、Cisco EnergyWiseというプログラムにより、オフィスビルのOA機器の省エネ化を進めており、この取り組みの中でPoE技術の開発に携わっているという。木下氏は、「通信の観点で音声とデータが統合できるのであれば、電力も統合できるのではないか?ということで、2000年に7W給電できるインラインパワーという技術を導入した」とPoEの歴史を振り返った。その後、2003年にIP電話機を想定した15Wを給電するPoE、2007年にビデオ会議端末を想定した30Wを給電するPoE+、ほぼ3年ごとに技術革新を進め、標準化への道程を示してきた。

ボーダレスネットワーク事業統括 専務執行役員の木下剛氏

シスコのPoE技術開発の取り組み

 今回発表したCisco UPOEは、PoE+の倍となる60Wを給電可能な新しいPoE技術。従来と同じくCat5eのケーブルを使ったデータ送受信と給電が可能で、既存のPoEとPoE+との互換性も確保した。従来のPoEではCat5eケーブルの4対の線のうち、通信に使わない2対で送電していたが、UPOEではデータ通信と送電を重畳させることで、4対すべてを給電に用いる。また、接続時にはLLDPやCDPなどのプロトコルを用いてネゴシエーションを行なうことで、非PoEか、従来のPoEか、UPOEかを自動的に識別する。こうした仕組みにより最大60Wの給電能力を確保することで、IP電話機や無線LAN APにとどまらずディスプレイやPC自体にまで給電することが可能になる。

 製品としては、Catalyst 4500E用のSupervisor Engine 7-E/7L-Eというスイッチングモジュール、UPOE対応の48ポートラインカードなどが用意される。こうしたUPOE対応のスイッチと対応デバイスでネットワーク化することで、デバイス単位での電力制御はもちろん、電源工事まで不要になるという。

60Wの給電を実現するCisco UPOE

スイッチ側でAC/DC変換を行ない、そこからDCで給電

 木下氏が強調したのが、UPOEがDC(直流)電源を採用しているメリットだ。現在のオフィスはAC(交流)電源主体だが、だいたい10%がACとDCの変換ロスとなっているという。また、停電時に給電を行なうUPSに関しても変換ロスが発生する。UPOEを採用することで、このロスがなくなり、効率化するという。

Catalyst 4500から無線LAN APやオフィススイッチ、ビデオ会議端末、ディスプレイなどが給電されている

デスクトップも照明まわりもケーブル減らしてシンプルに

 適用例として木下氏が挙げたのが、デスクトップのシンプル化。ディスプレイ、PC、内線電話などをそれぞれ必要だったACや通信ケーブルを排除し、同社VXIに統合し、物理的にも「シンクライアント」を実現するというというもの。パートナーとの協業として、VDIを統合したサムスン電子のゼロクライアントディスプレイ「SyncMaster NC220P」を使ってネットワークケーブル1本での接続を実現したという。

Catalyst 4500のラインカードからUPOE経由で給電するデモ

サムスン電子のゼロクライアントディスプレイはネットワークケーブル1本で給電も通信もOK

 また、UPOE経由でLED照明に給電するスマートオフィスも挙げた。LAN工事で施工するため、電気工事資格は不要で、既存の照明も使える。また、通信機能を利用し、Cisco EnergyWiseなどを用いて電灯などを細かく管理することが可能になっている。さらにAC/DC変換を高速に行なっているLED照明をDC給電にすることで、「LED照明のちらつき(フリック)までなくせる」(木下氏)というメリットまであると話す。こちらはDEPおよびシャルレライテックとの協業により、Cisco EnergyWiseとCisco UPOEに対応したLED照明とコンバーターも披露された。

 会場ではCatalyst 4500Eによって給電されているデモが行なわれていたが、来月開催される「Cisco Plus Japan」では、Cisco EnergyWiseを使った電力管理まで披露するという。

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