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TECLOSION 2011 Spring 基調講演レポート

愛されるウェブサービスの作り方──Evernote CEOが伝授

2011年04月18日 09時00分更新

文● 盛田諒/ASCII.jp編集部

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コホート分析で見える「3ヵ月目の法則」

 だが、そんな性善説のような考えでほんとうに収益があがるのだろうか? 彼は「もちろん」と答える。背後に映し出されたのは、コホートセオリーにもとづいて、Evernoteユーザーの会員数推移を分析したグラフだ。

 「β版をリリースしたのは2008年。3万2000人ほどのユーザーがいたが、翌月には55%のユーザーがいなくなった。翌々月も前月と同じ比率で減少した。ところが、3ヵ月後から先にいなくならなったユーザーはまったくいない。100%使いつづけることになったんのだ」

コホート分析によるユーザー動向

 彼はそう言って微笑み、さらに大きなグラフを示した。

 「毎月同じように無料ユーザーが入り、離れ、使い続ける。このパターンはすべてが同じだ。2ヵ月経てば、ずっと使ってくれ、使えば使うほど気に入ってくれる。クチコミでユーザー層も広げてくれさえする」

 さらに彼は1枚のグラフを示す。赤い三角形が右に向けて上がっていく。有料会員の数の推移を示したものだ。ユーザーの中から、有料会員もやはり前のふたつのグラフと同様のペースとパターンで増えてきている。

使う期間が長くなると、有料会員の割合も増えてくる

 「これが現実だ」と彼は言う。

 このフリーミアムビジネスを実現できているのはEvernoteだけではない。彼はふたたび新しいスライドをめくった。同様のモデルで発展していくサービスは、以下の代表的な4種類に分類できるのではないか、と。

  1. 徹底的に個人的な製品を作ること(例:Evernote)
  2. 使うほど個人同士がつながること(例:Twitter、mixi)
  3. 使うほどステータスが上がること(例:4square)
  4. 使うほどスキルが上がること(例:Photoshop)

 彼が講演を終えたあと、会場からは大きな拍手が上がっていた。その多くは、彼のような新しい世代のアントレプレナー(起業家)を目指す起業家のたまごたちだ。

 「未来を予測する最良の方法は、未来を創り出していくことだ」

 今から50年も前に、パーソナルコンピュータの概念を生み出したアラン・ケイのそんな言葉は、21世紀のいまも新しく響く。この会場の中から、そんな未来が生まれてくるのだろうか。


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