動作モードをコマンドに置き換えて
より細かい動作が可能に
SDRAMのパイプライン化については、説明が要るだろう。DRAM~EDO DRAMの世代でも、メモリーチップはさまざまな動作モードを持っていた。例えば、前回も触れた米マイクロンのEDO DRAMの場合は、12種類の動作モードが用意されている(個々の解説は割愛する)。
- EDO DRAMの動作モードの一部
- Read Cycle、Early Write Cycle、Read-Write Cycle、
- EDO-Page-Mode Read Cycle、EDO-Page-Mode Early Write Cycle、
- Read Cycle with WE#-controlled disable、RAS#-only Refresh Cycle、
- CBR Refresh Cycle、Hidden Refresh Cycle、Self Refresh Cycle
どの動作モードを使うかは、アドレスやRAS/CASやOE(Output Enable、出力指示)、WE(Write Enable、読むか書くかの指示)、CS(Chip Select、動作するメモリーチップを指示)といった信号線の上げ下げのタイミングで決まるという、なかなか大変なものだった。
ところがSDRAMでは、クロック信号でアドレスの出るタイミングは一意に決まるし、RAS/CASも不要である。そこで、アドレスバスと不要になったRAS/CASなどの信号線を使い、アドレスを出す前に「メモリーへのコマンドを出す」という方式が取られるようになった。
メモリー側からすると、まずコマンドを受け取りデコードするという手間がかかるので、若干構造が複雑になる。だが、従来よりもずっと多くの動作モードを利用できるようになった。SDRAMの場合は以下のようなコマンドが用意されており、これをCS/RAS/CAS/WEとBA0/BA1(バンク指定)、およびアドレスバスの一部を使って表現するようになっている。
- SDRAMのコマンド例
- Command inhibit(NOP)、No operation(NOP)、Burst Terminate、
- Read、Read with Auto Precharge、Write、
- Write with Auto Precharge: As above, and Precharge (close row) when done Activate、
- Precharge、Precharge All、Auto Refresh、Load mode register
例えば「Load mode register」コマンドの場合、コマンドを送るだけでなくアドレスバスの残りを使って、CL値(CAS Latency)やバースト転送のサイズを指定するといったことも可能になっている。EDO DRAMまでは、こうしたデータを送る方法がそもそもなかったのだから、大きな進歩である。
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