これに続き、2011年9月には2コアのLlanoが登場する。これはAシリーズではなく、Eシリーズ(E2-3250)としての投入になるようだ。TDP枠は35Wという話と65Wという話の2種類の話が聞こえるが、用途的にはメインストリームノートへの投入も考えているようなので、その場合65Wでは熱設計的にちょっと厳しい。また対象とする商品構成を考えると、65WものTDP枠は必要ないようにも思える。そんなわけで、ロードマップ図では35Wの数字を採用した。
AMD Aシリーズの発表時期に関しては、「5月初旬に発表」という話が出てきているが、これは「ノートPC向けのOEM出荷を開始する」ことと思われる。
これに続き、2011年第4四半期(10月から遅くても11月)には、それぞれに製品が追加される予定だが、これらはいずれもCPUコアの動作周波数を若干引き上げた程度になると思われる。少なくともGPU側の変更はないようだ。
Fusionを生んだのは「汎用CPUの限界」
Llanoに続いて2012年には、次世代Bulldozerコアおよび次世代Bobcatコアを搭載した、第2世代のFusion製品が投入されるという話は、連載80回と81回で紹介した。ここからはもう少し先の話をしたい。1月下旬に開かれたFusion Tech Dayの中で、AMDクライアント部門CTO兼副社長のジョー・マクリー(Joe Macri)氏が、今後のFusion技術の方向性について説明してくれたのだ。
もともとFusionの技術は、2006年にAMDが提唱し始めた概念である。その意味するところは「CPUとGPUの融合」であり、旧ATI Technologiesを買収したことで、初めて可能になった。
Fusionの目的は2つある。ひとつは、コンサバティブなx86コアの性能向上に限界が見え始めたこと。もうひとつは、GPGPU(GPU演算)の積極的な利用である。まずひとつめだが、これは別にAMDのみならずインテルも、さらにはほとんどの汎用CPUが共通で抱える問題である。
既存の命令セットのままIPC(Instructions Per Cycle)を向上させるのは、元々の命令セットがそのことを考慮していないケースがほとんどなので難しい。これを改善するために、スーパースカラーやアウトオブオーダー、命令変換などを駆使しても、増える回路規模や消費電力に見合うほどの性能向上は得られていない。
では「動作周波数を引き上げれば?」というと、こちらは急激に消費電力が上がってしまうので限界がある。これらの結果として、近年ではマルチコア化による性能向上へと進んできたわけだが、こちらもコア数と実際に利用できる性能の乖離が激しくなりつつある。こうした問題に対する解のひとつが、異なるアーキテクチャーによるマルチプロセッサー構成と考えられている。
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