世界の働きたい国に行ける制度も
「中でもユニークなのは、“Bridge the World”です。世界のオフィスの中から行きたい国を社員が希望し、その国で数ヵ月間働けるプログラムです」
他国の文化を知るというのは、お互いを知り、協調していくためでもあるが、グローバルな製品作りのために、社員の視野を拡げるといった目的もあるそうだ。日本のオフィスは、同プログラムで滞在したことのある社員たちからの評判がよく、そのためか日本で働いてみたいという声が多いそうだ。
社員の交流を図るためのイベントも年間を通じて頻繁にある。
「例えばバーベキューをしたり、ディナーを一緒に食べたり、時には同国の社員たちが一緒に料理を作り他の社員披露する“インターナショナル・クッキングディ”を開催したりしています。また、毎週金曜の夕方からは、社内のカフェテリアでビールを飲みながら交流を図る“Friday Night Beer”をします。これはオスロに限らず、他国のオフィスでも実施されていますが、例えば風習が異なるインドではしません。国ごとの文化を重んじ、押し付けないのもOpera流です。理解し合うことが目的ですから」
別オフィスの社員ともSkypeなどを通じて頻繁にコミュニケーションを取るという。確かに今回、インタビューに応じてくれた社員の全員から、ユーザーやデベロッパーのコミュニティを大切しているといったコメントがさりげなく語られていたのが印象的だった。Operaには、社内/社外を問わず相手の言葉に耳を傾ける文化が根付いているように感じた。
社内を見学している際、“Opera Academy”というポスターが目に留まったので、それについて尋ねてみた。
「Opera Academyは社内トレーニングの一つです。Operaでは社員に対して、常にチャレンジ精神を持って前進して欲しいと強く願っています。しかし、どんなにパッションを持った人でも、一旦会社に入ってしまうとどうしても毎日がシンプルになりがちです。社員のモチベーションを保ち新しいジャンルへの興味を持ち続けてもらうために、“トレーニング”“デベロップメント”“Opera Talk”という3つのプログラムを設けています。トレーニングとデベロップメントでは、技術的スキルやマネジメントや働きがいといった、プロフェッショナル性やキャリアを磨く内容を学び、Opera Talkでは、社員がお互いに仕事の内容や専門分野についてプレゼンテーションし合う情報シェアリングの場となっています」
「50以上の異なる国々からの従業員を抱える Opera は、まるでグローバルな家族のようなものです。常にエネルギーと活力に溢れた環境で、広く世界を見据えた製品作りを行っていきたいと努力しています」
そんな風にドゥッタ氏は語る。
人から与えられた居心地のよさ、創り出す居心地のよさ
筆者はOperaという企業に対して、米国のインターネット企業などと比べるとローカルで地味イメージを持っていたのだが、今回の訪問でその印象がガラリと変わった。取材の途中で、以前、シリコンバレーのグーグル本社を訪れた時のことを想い出していた(関連記事)。特に福利厚生や社員トレーニングが大変充実している印象を受けた。
グーグルも自由な感覚でレイアウトされ、広々とした間取りのオフィスだったのだが、Operaのオフィスでは、それとはどこかが違うという印象を受けた。確かに大学のキャンパス並みのグーグルの巨大さとは比べ物にならないのだが、そうではなくて何かが違うのである。
これはあくまでも個人的な感想なのだが、グーグルとOperaのオフィスの印象の違いは、「(会社から)用意された居心地の良さ」と「自分たちの手で作る居心地の良さ」なのではないかと思った。北欧の美しい景色と、まるで自分の部屋にいるようなオフィス環境と、50ヵ国以上の社員が集まるマルチカルチャーという社風が、特徴的であり、広く世界で受け入れられるサービス作りのもととなっているのだと感じた。