アナログからデジタルへの移行期をシミュレート?
―― このチームで「DS-10」と「M01」という、2つのニンテンドーDS用ソフトを開発したわけですが、棲み分けはどのように考えていますか?
佐野 基本的には違う楽器という認識ですよね。やりたくなかったのは、DS-10 PLUSの発展版みたいなもの。それはDS-10を買った人が悲しい気持ちになるじゃないですか。M1のコンセプトなら、楽器として被らないし、持っていれば両方使える。
―― アナログとデジタルですからね。
佐野 だけど狙いどころとしては、アナログシンセを生きて信じてきたのに、いきなりデジタルシンセという黒船がやってきて、翻弄されるあの感じ。我々が当時持っていた感情があるじゃないですか。あの感じを、また感じてほしいなと。
―― はっはっは。
佐野 いろんなことを大人が言うわけじゃないですか。「これから音は全部デジタルになる」とか、「いやいや俺はアナログとデジタルを両方使うんだ」とか、「アタックはデジタルで」とか、「僕は絶対にアナログシンセしか信用しない」とか色んなことが言われて、こっちはワーッとなっていたわけですよ。その感じを是非、M01で!
―― そこまで再現しなくてもいいような気がするけど面白い!
佐野 「機材」の総額はね、当時より安いわけですから、実際に買った人に比べれば。
―― ケタ一つか二つ安く済みますよね。
佐野 そうです。それをバーチャルで体験できる。でもDS-10を愛してくれた方はジレンマに陥ると思うんですよ。「これを認めていいんだろうか?」みたいな。そうやって混乱して欲しい。悩んで欲しい。それさえも当時の感じで楽しんで欲しい。自分で作っていても、それは感じるんですよ。
―― こないだまでアナログシンセ作ってた俺が、みたいな背徳感?
佐野 そうそう。