あの時代の音はデジタルリバーブが決め手だった
―― その話とつながるわけですが、M1はai(advanced integrated) Synthesis というPCM音源を積んだシンセサイザーだったわけですが、M01はPCM音源をプレイバックしているだけですよね? ai Synthesisを積もうという欲望はなかったんですか?
金森 DSでそれ(ai Synthesis)を真面目に実現すると、2ボイスくらいしか出ない音源になってしまう可能性があります。リバーブのようなエフェクトを使いつつ、同時に何ボイス出せるかの見積りをして、今の形になっています。何を重視するかというバランスの問題ですが、僕らはPCMプレイバック音源で12ボイスは絶対に必要で、それ以下には落としたくなかったんです。
佐藤 本当はリバーブも抜きたかったくらいなんですよ。
岡宮 しかしリバーブだけは死守してくれと。
佐藤 そういう佐野さんの強いオーダーがあったんですね。
佐野 もうリバーブだけは絶対に外してくれるなと!
―― デジタルリバーブの音は80~90年代の音には欠かせませんからね。
佐野 でも最初は、これをコルグさんのリバーブと言うのは難しいと。現代のコルグクオリティを満たさないということですよね。でも絶対にリバーブは欲しい。当時のリバーブの音がどうしても欲しかったんです。
―― リバーブの音色も当時の雰囲気を狙ったわけですか。
佐野 もちろんそうです。当時のCPUでは処理の限界があって、あからさまに計算量が少ないんですよ。でも、そこに当時の空気感があったんです。だけど未だに「ヴィンテージリバーブレーター」のようなものは出ていない。
―― ああ、言われてみれば確かに!
佐野 だから今回のこれが初めてじゃないですか?
―― じゃあ、ここは推しどころですね。
佐野 そうです!
―― リバーブの設計はどなたが?
井上 設計はあったんですけど、それを小変更して調整しながら進めました。
佐野 そのおかげで、M01はあの時代の独特な音がするわけですよ。だけど、当時はそんな気持ちで聴いていないわけで。だから、今あらためて聴いてみると、あの時代の音はこんな理由で成り立っていたことが分かる。現代の高性能なリバーブを入れても、あの時代の音にはならないわけですよ。
―― そこは計算通りであったと。
佐野 もちろん!