連載第6回で印象的だったのは、電子書籍に長く携わっているボイジャー 萩野社長の「大手印刷会社よりも規模の大きい出版社はない」という発言だった。
我々はどうしてもiPadやKindleなどの端末の機能であったり、インタラクティブなギミックに目を奪われがちだ。しかし、グーグルや印刷大手の取り組みは、より多くのコンテンツ(作品)をどのように獲得するか、その仕組み作りに着々と投資し、出版社の支持を得つつある。
折りしも2010年7月8日~11日の4日間、東京ビッグサイトにて第17回東京国際ブックフェア(TIBF2010)が開催された。電子書籍への関心の高まりから、ビジネスデーはもちろん、一般公開日にも大勢の来場者が押し寄せた。
今回は、ブックフェアのリポートを通じて、グーグルと国内印刷大手(トッパン・大日本印刷)の動向を中心にまとめてみたい。
出版社からも肯定的な反応「Googleエディション」
前回まとめたように、グーグルが2003年から進めていた、書籍のスキャンと検索インデックスへの登録プロジェクト「Googleブックサーチ」は、国内の出版社や著者からの反発で迎えられた。
その反省にたったのがブックフェア開催日に日本語版開始が発表された「Googleエディション」だ(関連記事)。
Googleブックサーチでは、グーグルがスキャンした書籍データが、検索結果として表示される。著作権の切れたパブリックドメインのコンテンツであれば、すべてを参照することもできるが、それ以外はその閲覧が全体の20%に制限されていた。
今回発表されたGoogleエディションは、権利者が望めば、残りの80%の表示について、有料での閲覧を可能とする仕組みだ。YouTubeのパートナープログラム同様、権利者にはウェブベースの管理画面が提供され、どのページがどのくらい視聴されたか、どういった検索ワードでのアクセスがあったかといった詳細な情報を確認することができる。
グーグルのサービスらしく、基本的に本の閲覧はウェブブラウザで行なう。ブラウザを搭載している端末であれば、世界中のどこからでもネット経由で購入した本が読めるというわけだ。データはネット上にあり、閲覧する端末を選ばないことから「本棚をクラウド化するようなイメージ」だという。
「説明を聞いていただいた出版業界関係者からも、おおむね好意的に受け止められています」と、グーグルブースの担当者は話す。その最大の理由は、権利者側に選択権が与えられているからだ。Kindleでは紙の本よりも安いことが求められ、iBookstoreでは価格帯や表現について制約があるが、Googleエディションではそういったことはない。
いわゆるほかの「黒船」に対する違和感に対して、うまく答えられているように受け止められたのが、肯定的な反応につながっているようだ。実際、ブースの裏側の商談スペースでは出版関係者が立て続けに詳しい説明を受けている様子が確認できた。
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