Googleの「Nexus One」がアメリカで苦戦している。1月初めの発売から低空飛行が続いたのに加え、4月末に期待されていたVerizon Wireless向けの販売がキャンセルとなった。その2週間後には、Sprint Nextelも販売計画を撤回した。
そして5月14日、GoogleはついにNexus Oneのオンラインストア閉鎖を発表した。マルチキャリアというGoogleの差別化戦略は事実上失敗したといえそうだ。
従来型モバイルエコシステムの破壊狙うも……
ご存じの方も多いと思うが、Nexus Oneは「Android 2.1」をOSに採用したGoogleブランドのスマートフォンである。プロセッサーには1GHzで動作するのクアルコム製のSnapdragonを搭載し、製造はAndroidを知り尽くしたパートナー、HTC社が担当した。
Nexus Oneは初のGoogleによる“Googleフォン”として注目されたが、最大の特徴はスペックや外観など端末そのものというよりも、Googleが選んだビジネスモデルだった。GoogleはNexus Oneの販売チャネルを自社によるWeb直販のみとした。さらには消費者がキャリアを選べる“自由”を売り物とした。
アメリカの消費者はキャリアが提供する携帯電話のラインナップから自分が欲しい端末を選んでいる。キャリアは契約などの条件をつける代わりに端末の単価を安くする。だが、GoogleのNexus Oneは、Nexus Oneが欲しいと思った顧客がキャリアを選ぶということが可能となる――これがNexus One発表時にGoogleが打ち出していた構想だ。
ところがふたを開けてみると、Nexus Oneに対応したキャリアはT-Mobile USAとAT&Tのみ。T-Mobile USAでは2年契約付きで179ドル。またSIMフリー版は529ドルで提供されている。
Nexus Oneは発売直後、アップル「iPhone」のような大ヒットには至らなかった。だが、ローンチパートナーとして米国最大手のVerizonが名を連ねていたことから、Verizon向けのCDMA対応版が発売されるまではNexus Oneの成功を決めるのは尚早という状態だった。
GoogleはNexus Oneの販売台数を公開していない。数値らしい数値といえば、調査会社のFlurryが3月に発表した「発売後74日間で13万5000台」ぐらいしかない(Flurryによると、第1世代のiPhoneは100万台を、米Motorolaの「Droid」は105万台をそれぞれ発売後74日間で売り上げたという)。
もっとも変化の兆候はすでに見えていた。Googleは初の海外進出となる欧州展開にあたり、英Vodafoneと提携しキャリア経由という従来のモデルを選択していた。オンラインストア閉鎖により、米国でもNexus Oneは提携キャリアの小売店から提供されることになる。
なおGoogleのAndy Rubin氏はオンラインストア閉鎖の理由について、「アーリーアダプタ向けのニッチなチャネルから拡大しなかった」と記している。携帯電話は常に持ち歩くパーソナルなものだ。携帯電話を手にとってみることなく買うということにアメリカの大多数の消費者が関心を示さなかったことも要因といえそうだ。
この連載の記事
-
第340回
スマホ
対米関係悪化後も米国のトップ大学や研究機関に支援を続けるファーウェイの巧みな戦略 -
第339回
スマホ
ビールのハイネケンが“退屈”な折りたたみケータイを提供 Z世代のレトロブームでケータイが人気になる!? -
第338回
スマホ
ファーウェイはクラウドとスマホが好調で大幅利益増と中国国内で復活の状況 -
第337回
スマホ
米司法省、アップルを独禁法違反の疑いで提訴 その中身を整理する -
第336回
スマホ
Nokiaブランドのスマホは今後も出される! バービーとのコラボケータイ、モジュール型などに拡大するHMD -
第335回
スマホ
ファーウェイスマホが中国で好調、次期HarmonyOSではAndroid互換がなくなる!? -
第334回
スマホ
Nokiaのスマホはどうなる!? HMD Globalが自社ブランドのスマホを展開か -
第333回
スマホ
アップルがApp Storeで外部決済サービスを利用可能に ただし手数料は27% -
第332回
スマホ
米国で特許侵害クロ判定で一時は米国で販売停止のApple Watch、修正は認められるか? -
第331回
スマホ
2023年は世界で5Gが主役になった年 世界の5G契約数は16億に -
第330回
スマホ
iMessageが使えるAndroidアプリが作られ、すぐ遮断 そしてRCS対応 吹き出しの色を巡る攻防 - この連載の一覧へ