VIAチップセットの歴史 その1
良くも悪くもインテルに振り回されたVIAチップセット
2010年05月10日 12時00分更新
GPU内蔵型チップセットで生き残りを図るも……
ディスクリートチップセットではシェアを失ったVIAであったが、2001年にGPUメーカーのS3 Graphicsを傘下に置いたことで、統合グラフィックの分野ではまだ勝負できると思ったようだ。2004年からはこちらに注力していく。
Pentium 4向け統合グラフィックチップセットの先鞭をつけたのは、2002月に投入された「P4M266」である。これはP4X266EにGPUの「ProSavage 8」を統合したものだが、採用例はほとんどなかった。
実質的な初の統合チップセットは、2004年3月に発表された「PM800」「PM880」で、これはPT800に「UniChrome Pro」を統合したものだ。特にPM800はメモリーバスを1チャンネルに削減して、バリュー向けを狙ったものだった。ところがこれでもまだ高かったのか、2005年8月にはエントリー向けとしてグラフィックス性能を落とした「P4M800」まで用意される。
低価格路線とは別に、PM800/PM880の後継として、PT890にUniChrome Proを搭載した「P4M800 Pro」が2004年9月にリリースされる。もともとPT890は、PCI Express(PCIe) x16レーンとAGP 8Xの両対応という珍しい構成のチップセットだった。しかし、「統合グラフィックを使うバリュー向けにはまだAGPで十分」と考えたためか、P4M800 ProではPCIeレーンを無効化して、AGPだけが用意された。
しかし、その後急速にAGPがPCIeに置き換えられていった状況を勘案したのか、2006年2月には逆に、PCIeを有効、AGPを無効化した「P4M890」を投入。さらに同5月には、内蔵GPUを「Chrome 9」に置き換えた「P4M900」もリリースされる。
これだけ製品を投入したものの、インテル向けチップセットのシェアは芳しくなく、その一方で組み込み向けチップセットのビジネスは好調に推移していった。また2003年におけるインテルとの和解条件によれば、「VIAがインテルのP4バス向けチップセットを販売できるのは4年間」(つまり2007年まで)とされていたので、その期限が近づきつつあった。
こうした事情もあり、このP4M900をもってVIAは、インテル向けチップセットの提供を終了することになる。ちなみに同社の製品には、ほかにインテルCPU“でも”利用できる「CLE266/CN400」というチップセットがあるが、これは次回のVIA C3向けチップセットで紹介したい。
今回のまとめ
・VIAのインテルCPU向けチップセットビジネスは、1996年登場の「Apollo VP1」から始まる。その後はSuper 7プラットフォーム向けに拡張が進むが、独自のメモリーサポートで苦戦したり、台湾大地震の影響で復活したりと紆余曲折をたどる。
・インテルがDirect RDRAM路線で失策を犯した間隙を突き、1998年7月に登場したSDRAM路線の「Apollo Pro」シリーズでシェアを伸ばすことに成功した。
・CPUの主流がPentium 4に移る2001年頃、VIAはインテルとの訴訟合戦に直面することになる。Pentium 4対応の「P4X266」などを投入するも、GPUを内蔵しないディスクリート型ではシェアを取り返せず、2004年の「PT890」で終了する。
・Pentium 4向けGPU統合チップセットの分野では、2004年3月に「PM800/880」を投入。その後はPCI Express対応など強化を進める。しかしシェアは芳しくなく、インテルとのバスライセンス期限も終了が迫っていたこともあり、インテル向け事業は2006年で終了する。
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