Windows 7対応の裏側に見た国内ISVの秘めた実力 第10回
TKC「会計事務所向けシステム(TKCシステム)」
分業開発も新OSにもいち早く対応! 会計ソフトの最前線
2010年03月12日 08時00分更新
ミドルウェア=フレームワークの移植が最大のキモ!
―― Windows 7対応で一番苦労したのはどこでしょうか?
桑野 タスクバーの扱いがWindows Vistaから大きく変わっていました(関連記事1)。実際に動かしてみると、複数のアプリを起動していてもアイコンが1つだけしか出てこないといった問題がありました。
当社のアプリケーションは独自のメニューシステム――実際はランチャーアプリケーションから、いろいろなソフトを起動するようになっています。しかしこれが、Windows 7のタスクバーではアイコンが自動的に集約されてしまうので、従来のユーザーが混乱しないように対策する必要がありました。
さらに、タスクバーアイコンの右クリックで表示される“ジャンプリスト”には、通常「ウィンドウを閉じる」という項目があるのですが、この項目でランチャーを閉じてしまうと問題が生じる可能性があります。こうした部分を無効にする必要もありました。
―― Windows Vistaへの対応に比べて、Windows 7対応の実作業はどうでしたか?
桑野 われわれの印象では、Windows Vista対応に比べればWindows 7のほうがラクでした。特にWindows Vistaでは、UAC(ユーザーアカウント制御)への対応が大変でした(関連記事2)。
Windows 7への対応は実のところ、大半の対応作業がミドルウェア内で済んだために、個々のアプリケーション側での修正は比較的わずかなもので、あとは各システムのリビルド程度で済みました。その意味で、Windows Vistaへの対応をきっちりやっていたので、今回(Windows 7対応)の作業は比較的短時間で済んだとも言えます。Windows 7でもUACの挙動が若干変わっているのですが(関連記事3)、その部分は、個々のアプリケーションでの確認やちょっとした修正で対応することができました。
―― .NET Frameworkと旧来のDelphiの開発システムが混在しているとのことですが、これは段階的に移行させている最中ということでしょうか?
古田島 アプリケーション単位で段階的に移行しているのですが、複数のアプリケーションが連携する場合もあるので、実際には機能によるグループ単位での移行になります。
テスト作業は人の目が頼りの部分も……
―― .NET FrameworkとDelphiでは、Windows 7対応の実作業に違いがありましたか?
桑野 実際のところ、.NET Frameworkで作ったアプリケーションの手直しはほんのわずかで、作業の大半はDelphi用のミドルウェアに関するものでした。
ミドルウェアの移植の作業自体は、2人で2ヵ月ぐらいかかりました。ただ全体として見ると、アプリケーション側のテストにかなりの時間をかけました。
―― テスト作業は自動化されているんですか?
桑野 残念ながらDelphi時代のものなので、テストは人力に頼る部分が多く、それが時間がかかった要因でした。とはいえ今回のWindows 7への移行は、内部動作の変更よりもGUIに起因するものが多く、どうしても人の目で見てチェックする必要がありましたから、結局は人力に頼る部分が多くなってしまいます。
またわれわれのソフトウェアは、稼働条件を“Windows XP以降”としてあるので、内部的にはOSのバージョン判定を正しく行なう必要があります。ソフトウェア自体も機能追加などでバージョンアップしているので、やはり修正が加わることになり、そのためのテストも必要でした。
当社のソフトウェアはレンタル方式で提供するので、常に最新のものが提供できます。しかしハードウェアについては、お客さまが必ずしも最新のPCを利用しているとは限りません。このため、Windows XPとWindows Vista、Windows 7を正しく判定してソフトのインストールを行ない、それぞれの環境で正しく動作する必要があります。そういうわけで、テスト項目も多くなってしまうのです。
―― Windows 7ではマルチタッチやセンサー対応など、GUIに大きな変化をもたらす機能が標準搭載されました。会計ソフトの分野で、GUIは今後どうなるだろうとお考えですか?
柳澤 周辺のシステム――特に販売管理などについては、Silverlightを使ってみようか、という考えはあります。実際いくつか検討していて、社内システムでトライアルしている段階で、うまくいけば展開しようとも考えています。会計事務所ではコンサルティング的な事業を行なうケースもあり、そうした場面で説得力のある資料を作成するのに有効だからです。
Silverlight 3までは、ビジュアルの派手さが先行して、ゲームやインタラクティブアプリケーションに特化している印象があったのですが、Sliverlight 4では業務向けアプリケーションの開発にも配慮されているところがあるようなので、大いに期待しています。
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