12月10日、シマンテックはクラウド戦略に関する発表会を開催。自社内でのコスト削減やクラウド対応ソフトウェアの提供など、3つのアプローチでクラウドに関わっていくことを明らかにした。
クラウドと聞いてまず思い浮かべるのは、セールスフォースやグーグル、アマゾン、そしてマイクロソフトのAzureなどであり、クラウドの話題で「シマンテック」という社名はあまり出てこない。そう、クラウドにおいて「シマンテックはメジャーの事業者になっていない」(シマンテック システムエンジニアリング本部 本部長の有吉純氏)のが現状だ。
しかし有吉氏によると、シマンテックはすでにコンシューマーやエンタープライズ向けのクラウドサービスを大規模に提供しているのだという。それは、2009年3月24日に始まった「ノートン オンラインバックアップ」や、2008年10月8日に米本社が買収したメッセージラボによるサービスだ。
ノートン オンラインバックアップは、シマンテックのデータセンタでユーザーのバックアップデータサービスで、ユーザー数はグローバルで900万人。扱うデータは42PB(ペタバイト)だ。1PBは100万GBであり、これは写真を含めた朝刊100万年分に相当するという。ノートン オンラインバックアップのデータはその42倍であり、一般ユーザーから預かるデータとしては世界最大級だ。さらに、四半期ごとに5PBずつ増加しているというから驚きだ。
一方のメッセージラボのサービスは、ユーザー企業宛のメールをいったんメッセージラボのサーバで受信し、スパム/ウイルスメールなどをフィルタしてから、ユーザー企業に転送するクラウド型のサービスである。こちらのユーザー企業数は2万1000社以上で、毎日3~4億通のメールを処理しているという。
このように、あまり表に出てきていないが、シマンテックはすでに大規模なクラウドベンダーであるのだ。
そのシマンテックは、今後もクラウド戦略を進めていく。クラウド専業にはならないが専業クラスの規模を目指す、売上高の15%をクラウド関連で達成するという意欲的なもの。そのために、
- クラウドサービスの自社提供
- クラウドに対応したインフラの提供
- クラウドに対応したソフトウェアの提供
という3つのアプローチを行なうという。
まずは自社のコスト削減から
クラウドサービスの自社提供については、データセンタのコスト削減がどれだけできるのかを自分たちで試してみたという。これは、コストが下がらなければ、外部のユーザーもクラウドを選ばないという理由からだ。
コスト削減の第1弾は、サーバーの削減だ。このために行なったのが、ブレード上に仮想マシンを走らせたサーバーファームの構築。買収した企業のサーバーを移設しての仮想化を進め、そしてクラスタシステムの変更を行なう。
効果はてきめんで、カリフォルニアのデータセンタにあった1635台のサーバーを352台に削減。2008~2010年でサーバの保守費用を約3億5700万円、管理者人件費を約6900万円、電力料金を約1億5300万円も節減できるという。
続いて行なったコスト削減は、ストレージの削減だ。ここでは同社Veritasブランドのバックアップやストレージ管理製品を活用した。活用されていないストレージのスペースの可視化、ストレージを階層化して重要度の低いデータを安価なストレージに移行、重複するデータは1つだけバックアップする「重複排除」などの技術を使い、69のディスクアレイを削減できた。
さらに、平均3200万円かかっていたディスクアレイ装置の追加購入が不要に。また、2008~2010年でストレージの保守費用が約7億2000万円、管理人件費が約2500万円、電力料金が約2300万円の節減になるという。
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